別の世界線【もしあのまま続いていたら】第7話から。
第8話:立場逆転の僕と君
「.......え?」
部屋のドアを開けると、首を吊った李乃さんの姿が.......
僕はいつの間にか体が動いており、李乃さんの首についている紐を解き李乃さんをベッドに寝かせた。
「李乃さん.....どうしてそんなことを.......お願い...死なないで.....」
そう願いながら数分が経過した頃、李乃さんが目を覚ました。
目を開け、僕の顔を見て言った。
『郁...?どうしてここにいるの...?それに私.....生きてる...?』
「李乃さん!よかった目が覚めたんだ...!心配したんですよホントに...!」
そう言うと李乃さんは言う。
『......見られちゃったってわけか....私の.....すべてが嫌になって、抑えきれない衝動の結果の姿をさっ.......』
「.......僕にあんなに優しくしてくれて.....なのに自分が辛い時は...どうして僕を頼ってくれないんですか...?僕....そんなに頼りにならなさそうですか....?」
『んーん....違うそんなことないよ...?でもね...?私さ....メンタル弱くてさ....人に頼ろうにも頼りづらいし.....』
李乃さんはどういうわけか僕と顔を合わせてくれない.......気まずいのかな.......
「で...でも...!僕は李乃さんのおかげでっ...!李乃さんのおかげで僕なりに......成長できたんですよ...?
出会う前は自分の意見もすぐ言えなかったし、人と話す時目を見れなかったし....てか話すことも出来なかったのに......李乃さんの前でだけのにかもしれないけど......だとしてもここまでしてもらったんです......僕も同じように......李乃さんの....成長の手助け......させて...ください!」
あふれる思いを李乃さんへ向け話す。
すると李乃さんは涙ぐみながら言う。
『っ.....私は郁の親でも何でもないし大して時間を共に過ごして来た訳じゃ無いけどさ......今感じたんだ........郁は私なんかより立派に成長したんだ......ってさ.......
仲良くなり始めた時も思ってたけど、郁は私と似ていて.....安心できた.....今の郁がいい....変わらないでいてくれる方がよくて......もし変わってしまったら....私が一人になって置いてかれてしまう......って......それが怖くて......郁の相談を聞いた時.....そうなってしまうんじゃないかって思って怖かったの.........』
「李乃さん......」
『親近感ってやつで.....それに依存してたみたいな......どう表せばいいか分かんないけど........ねぇ郁?....その......自殺しようとした女の子なんて.....嫌い...だよね?』
申し訳なさそうな顔をこちらに向ける李乃さん。
僕は先ほどから思っていた言葉を言った。
「李乃さん......貴女はそうやっていっつも僕には優しくするくせに自分の事は優しくしない......嫌わないでほしいくせに心とは逆のことを言う。自殺なんてしたくないくせにしたくないのにしてしまった。
僕は李乃さんが好きですし今もそれは変わらない。ですからお願いです。
自分をほったらかすのはやめましょう?
どんなに僕の事が大事でも、それより自分の体や精神を大事にしてください...!
僕はもう大丈夫です!李乃さんから離れたりしませんし、ずっと一緒です。」
そう言うと、李乃さんはいつの間にか凄い量の涙を流していた。
そして李乃さんは小さい声で言った。
『お願い......抱きしめて........』
「.........はい」
ベッドから起き上がっている李乃さんを僕は抱きしめた。
僕は優しく抱きしめるけど、李乃さんは強く抱きしめてくる。
その際に李乃さんはこう言った。
『なんか.......立場変わっちゃったね...笑 私が郁の立ち位置になっちゃった....笑 』
「.....っ笑 そうですね.....」
『まぁでも......優しくされんのも.........悪くはないのかもねぇ........な~んて.....』
《数日後の放課後》
今日は横浜の港で祭りがあるらしい。
それはぜひ行きたいと思い、放課後李乃さんと行く約束をしていた.....がしかし。
「李乃さん!行きましょ!」
『うーん!ちょっと待って今行くー!』
きっと楽しみになるだろう!そう心に秘めていると......僕の前に知らない女子が3人くらい立っていた。
「.......っ?」
〖あーごめん。李乃と帰んの?だったらごめんね~?李乃は私たちと帰るから......ね?李~乃?笑 〗
『え...?』
薄ら笑みを浮かべ僕の後ろにいる李乃さんに向かってそう言う女子達。
「......僕たちこれから用事があるので、どいてくれませんか?」
〖はぁ?明らか陰キャ臭いあんたの指図を私達がなんで受けなきゃいけない訳~?
陰キャが出しゃばんじゃねぇよ。おめぇは引っ込んでろ!〗
リーダー的女子がそう言うと取り巻きの女子達も似たようなことを喚き散らかす。
僕はそこでこの3人が李乃さんをいじめていた人たちなんだと察した。
「貴女達ですか....李乃さんをいじめていた人たちは。もうやめてくださいよ。
李乃さんが嫌がってるのがわからないんですか?」
〖正義のヒーローぶってるつもり~?お前邪魔なんだよどけっ!〗
そう言って僕の体を強く押す。
倒れはしなかったけど、少しよろめいた。
「っ...!.......僕には貴女達を撃退するほどの強さとかは無いのでどうしたらよいかと考えたんですが........一つありました。」
〖は?何言ってんの?〗
僕は後ろにいる李乃さんの方を向き、李乃さんの手を掴む。
『うぇっ.....郁?な...なにしてるの?』
「李乃さんが僕を遊びに連れ出した時.....本当はあの女子達の方向から行っていましたが、今回は別の方向から行きましょう。」
『え、それってどういう意味———』
僕は李乃さんの足を引っ張って後ろの方にある階段を下って校内を走り回る。
後ろからは当然女子達が追ってくる。
校内を駆け回ったり、階段の下のスペースに隠れたり、これが青春なのかと思いながらも僕達は女子達を巻いて学校を出た。
「ふぅ~.....疲れました......」
『けど....楽しかった!それに、郁がいてくれなきゃだめだわやっぱ!笑』
「笑っ......家、行きましょう。準備をしないと。」
『うん!』
そうして僕達は、祭りへ行くためにそれぞれの家に戻り、僕の家に合流した。
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