第6話:僕と君の話①
僕は大して君みたいにラブソングが好きじゃないし、君がラブソングを聞いてキュンキュンする傍ら僕はそれを眺めるだけ。
けど今ならラブソングを聞きたいと思えるのかも。
君が聞いていた西野カナだって聞きたいと思えるよ。
嗚呼、君が僕に話してくれたあの会話....僕の人生を変えてくれたあの瞬間.....忘れもしない......忘れられもしない......なのに君は....そうやって僕の元から消えてしまう......
柄にも無く君が泣いたあの時、どうすれば良かったか分からなかった僕だけど....今なら何をすればいいか何を伝えれば良かったか(良いか)分かるよ。
──────
~《8月26日の午後19時》~
今を思い返すなら、そうさせていれば良かったんだと後悔する。仕方がなかったとはいえ。
いつものように李乃さんは僕の家に遊びに来ており、遊んでいたら気付いた時には19時となっていた。
『ってもう19時じゃーん笑 やばー帰らないとー笑』
そう言って荷物をまとめ出す李乃さんに、僕はこう言った。
「李乃さ....あ...あの....時間ももう遅いし....その....泊まっていったら.....ななんて......」
『泊まるー?ん〜....私はいいんだけど、事前に予定立ててじゃないとダメかな~ごめんね?』
すると李乃さんにやんわり断られた。
「は...はい....ごごめんなさい....僕なんかが急にこんな事.......」
『僕なんかがなんてそんなことないってー笑 ほら私帰るから、玄関まで来てよ!笑』
そう言われ玄関まで降りて行った。
『......っよし、それじゃまた明日!』
「き...気を付けて....ホントに.....」
『はーい!笑 ありがとうね心配してくれて!笑』
そう僕に笑いかけ、李乃さんは帰って行った。
閉まっていくドアをなんとなくぼーっと見ていると、リビングから玄関にお母さんが顔を出してきた。
〔郁、あの子とホントに仲良く遊ぶようになったね〕
「うぇ....う...うん、まぁ.....」
〔お陰様で楽しそうな郁を見れてママは嬉しいよ!笑〕
そう言ってはにかむお母さん。
〔でも怖いねぇ....こんな夜に一人なのは......〕
「うん....そうだよね......」
とは言いつつ時すでに遅しなので、リビングへ行きご飯を食べた。
ご飯食べてる中でも心配が凄く、あまりご飯が喉を通らなかった。
今日はいつもより遅くまで遊んでいたから心配がデカかった。
~《そしてその日が終わり、数日が経ったある日の深夜》~
今日はいつもと違って中々寝付けない......
そう思い、ボーっとベットの中でスマホを眺めていた。
すると、ふと李乃さんからLINEが来た。
「李乃さん...?こんな真夜中にどうしたんだろう...?」
LINEを開き送られてきた内容を見ると———
『郁...?起きてる...?』
「起きてますよ」
『ちょっと話せる?通話でさ。』
「今ですか...?」
『うん。掛けるね。』
そう言って通話がかかってくる。
出ると李乃さんは、すすり泣いていた。
『うぅ....うっ.....うぅぅぅ......』
「り...李乃...さん...?ど...どうしましたか...?」
突然のことで困惑していると、李乃さんがこう話しを切り出してくる。
『郁....相談があって....その...部活の事で......』
「部活...?そういえば...李乃さんって、なんの部活入ってるんですか...?」
そうふと聞くと、李乃さんは弱々しい声で言った。
『女バス.......そこでちょっと.....いじめ...って言うかまぁ.....そんな感じの事されてて.......』
「.....いじめ...ですか...?何をされてるんですか...?」
『シュート練の時に私のボールをわざと遠い場所に投げたり、部室で私の上履きを隠されたり、私に聞こえるように陰口言ってきたり......今日だって部活行って....気にしないようにしてても...やっぱ嫌でも耳に入ってくるし......もう耐えられなさそうで.......どうしたら......』
涙ながらにそう語った李乃さんは、またもや泣き出す。
『あうぅ.....うぅ.....うぅぅぅ.......』
僕は焦った。いきなり通話をかけてきて、泣かれて、どうすればいいか分からず無言でいると.......
『郁....今から少し公園とかで話そうよ......お願い......』
「い...今からですか...!?こんな早朝に...!?」
『お願い...お願い郁......』
そう泣きながらお願いされるので、断りずらく渋々了承し、互いの家から近い公園に集まった。
~《カクヨム公園》~
早朝ということもあるが、薄暗い中でも李乃さんの悲しげな顔がよく見える。
「李...乃さん...?どど...どうしましたか?」
『.....郁...どうしたらいいの...?私ひとりじゃもう耐えられないの.......今まで郁の前では気丈にふるまってたけど....私...ほんとは毎日辛かった....。
朝9時から昼12時まで部活やって、終わったら郁の家行ってた。それは部活の辛さを忘れる為.....。
郁と居ると、嫌な事全部忘れられる気がして.....でももう.....』
そう言うと、李乃さんがいきなり僕にしがみついてくる。
僕の寝巻を掴んで言った。
『助けて...どうしたらいいの...?私このままじゃ自殺しちゃいそう......部活にも.....学校にも行きたくないよぉ.......』
そう言い僕に抱きつき、顔をうずめて泣いた。
僕は戸惑った。戸惑い焦る中、僕はこう聞いた。
「そ...その....ど...どうしたらいいか分からないですが......そ...その....自殺....なんかしないでください.....お願いです.....その.....あっ....李乃さんが居ないと.....その.....嫌というか....また前の生活に逆戻り....というか.....」
『でも.....部活辞めても、学校が同じじゃまた同じ目に逢うし.....でも行かないと生徒会の仕事が出来なくて迷惑掛けちゃうし......自殺しかもう思いつかないの.....』
そう言う李乃さんに、どう声を掛けてあげたら良いか分からず数分間沈黙が流れた。
そして数分後李乃さんがこう言った。
『私が....小学校の時不登校だったって話した時.....昔と今で性格が違うのは変わらないとって思ったからって言ったの....覚えてる?』
「えっ....う...うん」
『何故それを行動に移したか.......もちろん心機一転の為でもあるけど...元の本質としては、根暗だったあの頃と今の自分は違う...今の私は明るくて良い人生なんだ.....そう自分に思い込ませる為に変わったんだ......』
李乃さんはそう言いながらブランコに座る。
そしてブランコの方に手招きしてくる。
僕はそれに従い隣のブランコに座る。
『郁をみなとみらいに連れていこうと思った理由も、もちろん郁と遊びたいってのはあった。でも7割は郁の上に立った気でいたの。
つまり"遊んであげてる"感覚でいたって事。』
「え....どういうこと...ですか...?」
『ホントごめんね.....善意はあったけど、100%では無かった。半分郁の事を見下してたんだと思う。もう隠したくない。』
僕はいきなりの事で唖然としてしまっていた。
すると李乃さんはふとこんな事を聞いてくる。
『ねぇ郁...?この際だし聞いちゃうけどさ......私の事...好きでしょ?』
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