第5話:不登校だった君と僕②

ゲームをやめ僕達は休憩していた。

李乃さんが僕のベッドに寝そべり、僕はベッドを背にして座ってた。

そんな時ふと李乃さんは僕にこんな事を話し出した。



『......私ね...?実はこう見えて学校行かなかった時期....あったんだ.....』


「え...?」


『驚いたぁ〜?冗談じゃなくホントなのよこれが。

大マジ。ノージョーク。期間は5年生から6年生のほぼ全部で、行った回数も2年合わせても10回いくかいかないかくらい。』



僕が驚いてる間に、淡々と話を進めていく。



『なんで行かなかったかって言うと、簡単に言っちゃイジメよイジメ。

酷かったよ〜?当時の私は今とは真逆の根暗陰キャぼっちで、メガネかけて教室の端っこにいるような人間でさ......クラスの男女数人からいじめを受けて...."メガネは4回"替えたし、"筆箱も3回"くらい替えたし、何より多かったのはランドセル!

あれに至っては"7回"替えたよ〜.....ホント...あん時は結構キツかったなぁ......』



僕は驚きのあまり言葉が出なかった。

今の今まで僕とは真逆の存在である李乃さんが、実は過去にそんなことがあったんだと思い....イメージとは真逆で驚き過ぎている。



『そのいじめっ子はねぇ、結構ヤバいくてね?

コンパスあるじゃん?あの針で、私の太ももの内側に刺したの。今も傷跡が消えてないの.....見る?笑』



李乃さんは僕が見たいと言ってもないのに制服のスカートをたくし上げ、パ...パパ.....パンツ....が丸...見えなのに....太ももの方を指差しで話し出す。



『ほらここ。見えにくいかもだけどこれが痕。触ったりしても別に痛くは無いけど、思い出すと痛くなるんだぁ〜......心の傷ってやつかな?笑

.......ってどこ見てんだよー笑 変態さんめ!笑』


「.....えっ!?あっいやっ!べべっ...別ににに.....みみみ見てないぃ...よ...!.....ごごご...ごめんなさい.........」



李乃さんは笑ってこう言った。



『アハハハッ!笑 慌てすぎ慌てすぎ!笑 ヒーッ笑 反応面白すぎ〜笑』


「..........」


『っ〜.......まぁそれはそうとして、そんな根暗メガネ陰キャちゃんは今どうしてこんな感じなのかと言うとね、簡単だよ......"変わらないと"って思ったから。』



そう言って李乃さんはベッドから起き上がり、後ろから僕の両肩に手を置いて言った。



『ねぇ郁?君はどうして学校へ行かなくなっちゃったのかな...?』


「えっ.....」



そう聞いてきた時の李乃さんの声色はとても優しかった。

耳元で囁いてくる感じ。



『先週も来れてない日もやっぱあるし、学校で過去に何かあったのかなって......

教えてくれないかな.....?』



言おうにも自分の中で葛藤があり中々言葉が出てこない。

そんな僕を見た李乃さんは僕の隣に座りこう言った。



『自分を成長させる為にはね...?自分の悩み...それと弱さを....さらけ出すことなんだよ...?』



続けてこう言う。



『中学校には....私を小学生の頃から知る男子や女子も居る....そういう人たちは私の事を裏で【陽キャっぽいふるまいしてるだけのド陰キャ女】って言うの。私は気にしてないつもりだけどやっぱ嫌でも頭に思い浮かんで.....その度に嫌になって......つまり何が言いたいかって言うと───


"私だって学校なんか行きたくないんだよ...?"』


「っ......」



ふとチラッと李乃さんの顔を見ると、少し涙ぐんでる様に見えた。もしかしてたら泣いてたのかも。



『今日だって心の中じゃ"やっと一学期が終わった"って思ったし....学校から逃げるように君の家に行って......ごめんね?私が郁を学校に行かせようとしたのに、当の本人は実は学校行きたくないって思ってたの.....裏切る感じになっちゃった...よね.....ホントごめん.........っ』



そう言って涙を流し始める李乃さん。

でも僕は自然と口が開き、気付けばこう言っていた。



「....僕と...同じだ......」


『......え...?』



一度声を出したら、なぜだか止まらない。



「僕も....今日、やっと終わった.....そう思ったの......

学校へ行くのが嫌で....それがしばらく行かなくていいんだって思って.....安心してた......」


『っ.......』


「僕も学校でイジメ受けてたんだ......中二の後半から李乃と会う間での間......悪口や嫌がらせを受けて....それに耐えられなくなったのが4月で.....」



きっと"気づいてあげられなくてごめん"等と言われるかもしれないが、気づくわけも無いのだから仕方が無い。

全ては誰もいない空き部屋で行われた事なのだから。



「今まで僕だけが....僕一人だけがこんな思いをしてると思ってた......けど実は....僕の気持ちを理解できる人が、こんな近くにいたなんて.....思ってもみなかっ.....っ!あっいやそのっ....ごごめんなさい急にこんな事...!」


『......うぅん!なんか...嬉しいよ...!ようやく話してくれた.....嬉しいよ』



李乃さんの顔に少し明るい表情が戻った。



「そのだから.....少し安心....出来たよ.....

僕は一人じゃないんだな.....って.....ありがとう....李乃...笑」


『こっちも嬉しいよ....ありがとう郁!...ってやばっそろそろ帰らなきゃ!』



李乃さんは急いで玄関まで降りていく。

僕はそれに着いて行った。



『靴靴....っよし!んじゃ、また遊ぼうね!

夏休みいーっぱい遊んで、楽しもうね?笑』


「う...うん!また...またね...!」



そして李乃さんはドアを開けて外へ出る時、僕は李乃さんを呼び止めた。



「李乃さん...!」


『...ん?どーしたの?』



李乃さんはキョトンとした表情でこっちを向く。

僕は勇気を出してこう言った。



「そ...その....ももし良ければその....い嫌じゃなければ....そそ...相談!とか....ししたかったら....きき...聞きますので.....遠慮なく...言ってくだ...さい...!」



心臓バクバクでどうにかなりそうな中、李乃さんはこう明るくこう返事した。



「うん!ありがとう!そうするね!笑」



そう言って李乃さんは外に出る時に僕に手を振ってきたので僕も手を振り返した。

あの話で忘れてたけど、自分の部屋に女子を入れたのは今日が初めてでまだ余韻があった。

それに.....あの話をして少しスッキリした気分と言うか....安心出来る気がした.....。


李乃さんもあの見た目や振る舞いに反して、意外にも僕と同じ悩みを抱えてた.....人はやっぱ見た目によりけりなんだと....そう感じた。


今日は早くご飯食べて、寝てしまおう。

久しぶりな感覚ばかりだ.....明日にワクワクしているこの感覚.....人生が上手くいく兆しなんだろうか....?

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