第2話:陽キャの君
母〘郁?貴方いきなり学校なんか行って....何かいい事でもあった?笑〙
学校から帰ってくると、リビングで家事をしている母からそう言われた。
「うん...まぁそんなとこかな......行こっかな...みたいな......」
〘そりゃいい事だけど、すぐにじゃ習慣ってのは続かないからなにか理由でも作ってみたら?学校に行く理由を。〙
理由か.....少し考えてみたけど全く考えつかなかった。
なので曖昧な返答をした。
「うんまぁ.....考えとくよ.....」
そう言って無言で部屋に戻っていく。
リュックをその辺に放り投げ、ベッドに横になる。
そしてスマホを手に取り李乃さんのトークを開く。
「李乃さん.....僕の心配をなんで......」
トーク画面を眺めながらそう思い、心配してくれた事実に酔いしれていた。鏡で見たら僕の顔はきっとニヤけてるはず。
トーク画面を見ながらニチャニチャニヤけてると、突然李乃さんからLINEが来た。
慌ててトークを閉じるも既に既読をつけてしまった。
「どっ...どどどうしよう.....既読...秒でつけちゃった.....どうしようどうしよう...!」
恐る恐るトークを開き内容を見ると───
『明日も来てね!待ってるよ!』
明日も...来てね.....か.....怖いけど....学校...明日も行こっかな.......李...李乃さんの為......あぁ!なっ...何言ってるんだ僕...!落ち着け...!
「分かりました。明日も頑張って行きます。」
【やったー!遅刻しないでよね~!】
その日はそんなトークをして終わった。
〜《次の日の朝7時半》〜
春の心地良い気温に風が部屋に流れ込む。
身体を起こし、やらなくてはいけない事を頭に思い浮かべながら洗面台へと向かう。
不思議にも、この一通りの行動を無意識に出来ている。
何日も学校へ通わずこの時間もベッドの中にいつもはいるのに、身体がこの習慣を覚えているかのように何気なくやってのけていた。
朝ご飯も実に一ヶ月ぶりだ。親の手料理はやっぱ美味しい....そう思わせる。
歯磨きを磨き、トイレで用を足しいざ登校。
「行ってきます......」
〘行ってらっしゃーい!〙
〜《教室》〜
席に座り窓の方をボケーッと眺める。
そしてふと自分の前髪が目にかかる。
「っ......髪...切らないとな.....いつの間に長くなってたんだろ......」
そう呟き前髪をかき分ける。
そのまま時間は過ぎHRを終え、そのまま授業を適当に過ごし給食の時間。
班の人達は僕抜きで楽しく談笑する。
僕は無言で給食をパクパク食い終え、先に弁当箱を戻しトイレに行く。
〜《トイレ/個室》〜
「ハァ〜......帰りたいなぁ〜.....」
誰も居ないトイレの中で僕一人そう呟く。
「(李乃さんが言ってくれて.....それで行く気になったけど.......やっぱここに居ると不安だよ......ちょっと自分の中で李乃さんと仲良くなりたい.....ましてやもう仲が良いって勘違いしてるみたいだし......あんな心配.....ただの義務的なLINEで...僕の事を思ってた訳じゃ無いのに.....僕は何を勘違いして........)」
トイレの個室で一人そう思った。
行ったら誰か、李乃さんとかと仲良くなれるかもと。
僕みたいな人間ってそう期待しがち。少し自分の中で服装や性格、何か一つが変わったなと思うとそれを誰かが必ず気づいてくれると勝手に期待する。
「(明日は.....っ...行かないでいいや......)」
そう思いトイレを出てとぼとぼ教室へ戻る。
教室へ向かう途中の廊下で僕に声をかけてくる人がいた。
『ねぇ君!そーだよそこの君ー!下向いてる君だよ!』
「っ...!?」
突然の事でびっくりして顔を上げると、僕の目の前に李乃さんが立っていた。
「李...李乃さん...?ぼ...ぼ僕に何...か...?」
『アハハッ笑 私の事さん付けで呼ぶなんて君礼儀正しいねー?笑 さんなんか要らないよ!笑 敬語も無し!
私の事は
そう言って李乃さんは僕の鼻に人差し指の先端をつける。
『それと、どう学校は?まだ二日くらいだけど。』
「え.....学校.....ま...まぁ.......」
李乃さんが僕の顔をじっと見てこう言った。
『君.....明日行かないつもりでしょ....ん?』
「っ!?」
僕は図星をつかれあからさまに驚いた。
『やっぱりそーでしょー!?なんでよー?
..........ちょっとここだとあれだし、あそこで話そ?』
そう言って何かの準備室の方を指さし、僕をその部屋に誘導した。
〜《準備室》〜
李乃さんが部屋のドアを閉めた途端僕の方を振り返って言った。
『.....で?どうして?』
そう言って僕を見つめる。
「ど...どうして....?......その....あぁっと.....っ......」
言葉が出てこずお得意のしどろもどろになる。
それを見兼ねた李乃さんがこう言う。
『ん〜〜〜分かった!』
「え...?」
『私と勝負しようよ!私が君と今日一日過ごして、明日の学校行く気にさせたら私の勝ち!させられなかったら私の負けで君の勝ち!私がもし負けたら何か一つなんでも言う事聞いてあげるよー!逆に私が勝ったら言う事聞いてよねー?』
僕は今何を言われたのか少々混乱して分からない。
李乃さんが?僕なんかと一日一緒に過ごす?
............え?
「え?.....え...あっ....は...はい....?」
訳も分からず取り敢えず返事を返す。
すると李乃さんが僕の腕を掴む。
『よしじゃあ早速、帰ろっか!』
「えぇ....あっ...はい」
今日は短縮で給食終わったらもう帰る時間。
腕を掴まれ教室へと引っ張られる。リュックを手に持ち李乃さんに引っ張られながら校内を走り回る。
初めてだ、こんな感覚.....どう表せばいいのか分かんないけど.....何が起こるのかって言うワクワクとした気持ちがあるのは確か。
楽しみ.....かも......
『郁、よろしくね!』
「え...えぇ...よ...よろしくお願い.....します......」
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