第5話 日南の昼
さて、土曜日の日南である。金曜日の晩に、新幹線に乗り、そのままホテルへ行き着いた。一応、身の潔白のために言っておくが、やましい事はやってない。そもそも別部屋である。工藤さん曰く「ずっとカープについて話してたいね…」との事だが、僕から断った。密室に二人はキツすぎる。そんなこんなで朝を迎えた。早朝5時、工藤さんにモーニングコールで叩き起こされ、夢と現実の狭間を歩いている間に到着した。「すごいやってるね〜」開口一番、工藤さんは幸せそうだ。いや幸せだ。僕はといえば新井監督の方にしか目がいってない。なんでも、この監督は度々爆笑の渦にファンを引き込むらしい。しかしながら今日は違った。研ぎ澄まされたような目つきで、選手を見守っている。僕も食い入るように見た。工藤さんも、何も言わずに僕と同じように見つめていた。選手の一挙手一投足に心を奪われた。観客、選手問わず誰一人として目が死んでいる人はいなかった。「すごい守備だね」無意識のうちに声が出る。「そこから投げられるんだ」工藤さんも無意識らしい。何か心が通じ合った気がする。僕の頬も、工藤さんの頬も紅くなった。まだまだキャンプは終わらない。
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