第3話 永久欠番

野球には、永久欠番がある。例えば、王貞治の1、長嶋茂雄の3といった具合である。これらの背番号は、他の選手がつける事は出来ない。そんな永久欠番について、工藤さんは話すらしい。「田中くんはさぁ、カープの永久欠番について知ってる?」「まぁ、うん。衣笠さんは3で…山本浩二さんは8、あ。黒田さんは15だったかな」昨日Wikipediaを見た甲斐があった。これで終わりかなと思った僕がバカだった。工藤さんはこれだけでとどまらなかった。「あ、そうだ。豆知識教えてあげる」「はあ」気の

抜けた声になってしまった。「衣笠さんはね、第二回国民栄誉賞を貰ってるんだ」僕はこう言うしかない。「へぇ、そうなんだ」王さんの次は衣笠さんらしい。結構知らない人も多いのではないか。「あとねー。山本浩二さんは入団からずーっと、2桁本塁打だったんだよ!」これも意外と知られていない。ちなみに最終年は29本である。…あれ。僕って最初、そんな乗り気じゃなかったよな?なんなら、この人とこの会話をしても、何にも感じなくなったよな?

どうやら僕も『鯉』に毒されたらしい。ただこの毒もいいかもしれない。そう考えている間に、工藤さんの明るい声が、教室に響いた。「次はカープの、何について話そうかな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る