第2話 カープって何?

 あの衝撃的な発言から3日。僕の頭はとろけたらしい。工藤さんからの手紙が机の中に入れられていても、もう感情がない。ただ椅子に座って待機するだけである。今日はものの数分で来た。この前より早いのは気のせいじゃなくて、事実だろう。そう思いたい。「田中くんはカープについてどう思ってるの」僕は恋愛相談されてるのか?しかし答えないと帰れない。多分、おそらく「カープって鯉でしょ。ちょっと、他のチームに比べてダサいかな…」「ダサくないもん!かっこいいもん!」工藤さんは膨れながら言った。可愛い。可愛いんだが、なんか違う。こう言う話じゃなくて、もっと恋愛的な…。そんな僕の気持ちには構わずに、工藤さんは続ける。「鯉って言うのはさ、滝を登ったら龍になるんだよ?だから強いじゃん」「いや、ドラゴンズがあるじゃない、工藤さん」その一言を言った途端、工藤さんはへにゃへにゃと座り込んだ。これくらいの復讐は許して欲しいものである。とはいえ、流石にもぬけの殻になる前に、工藤さんを家に帰さなければ。それくらいの良心は僕にもある。「工藤さん、帰ろっか。もう遅いし」「うん」と工藤さんは答えた。「じゃあまた明日も、カープについて話してよ、僕、工藤さんのカープの話、もっと聞きたいからさ」工藤さんの耳がほんのり赤くなった気がする。「ま、任せてよ!明日はカープの永久欠番について話してあげる!」明るい工藤さんの声が、廊下に響き渡った。どうやらカープについての話は長くなるらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る