これは鯉ですか?

銀華

第1話 これが「鯉」だ

僕は田中翔太。ごく普通の高校2年生だ。学校の教室にいるが、いつもはこの時間までいない。家に帰ってゲームをするか、勉強している。しかしながら今日は帰っていない。ある人から手紙が届いたからだ。「放課後、教室で待ってて。工藤亜希」工藤亜希は容姿端麗、学校中1番の美少女と言っていい。そんな人から呼び出されたんだから、舞い上がるに決まってる。落ち着け、俺ー。そう言いながら、教室をうろうろしていると、ドアが開いた。「ごめん、待った?」女神降臨だ。前世の俺ありがとうー。そう言う気持ちを抑えながら、僕は聞いた。「話って何?」期待と不安が半分半分だった問いは、彼女の一言で困惑へと変わった。「田中くんとカープについて話したいんだ」刹那、僕の脳は機能を停止した。いや、させたと言った方がいいか。訳がわからない。なんで今なのか、なんでカープなのか。「迷惑だよね?」迷惑じゃない。困惑だ。あとカープについて話すのは里崎さんとか解説者くらいだろ。「迷惑じゃないけど…」困惑の渦に叩き落とされていく中で、こう答えるのが精一杯だった。こうして僕と彼女の、奇妙なカープ談話が始まっていくのである。

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