8/18 道尾秀介『カエルの小指』


 最大の大仕掛けから十数年……。詐欺師から足を洗った武沢竹夫は、実業販売で地道に生計を立てていた。そんなある夏の日、仕事中の彼の前に現れた中学生のリョウは、あることを直談判する。そこには、武沢がかつて知り合ったとある女性の飛び降りが関係していた。

 二〇〇八年に刊行された『カラスの親指』の続編にあたるミステリー小説。二〇一九年刊行。


 前作ではラストの大仕掛けで、息が止まるほど驚いたので、続編も期待しながら早めに読んでみた。詐欺をやめた武沢と、家族が増えたまひろたちのやり取りが、時間が経っても変わらなくて、まずそこにほっとした。

 しかし、前作の後に大きく人生が変化した武沢とまひろたちとは正反対に、詐欺によって崩壊してしまったリョウの人生はなかなか壮絶だ。リョウ以外の家族がとても善良で、その分信じやすくて、正直者が馬鹿を見る世の中にしてはいけないなぁと改めて思ってしまう。


 「責任を取ってほしい」、そう言って、武沢に近付いてきたリョウは、何を目的にしているのか。武沢による派手な仕掛けは、果たして機能するのか。ページをめくるごとに増えていく謎に翻弄され、騙す側・騙される側も混沌としていき、一体最後に何が待ち構えているのか、ずっとハラハラしていた。今作も、登場人物のさりげない一言から伏線になっているから見事だ。

 前作は、信じることに焦点を当てたが、今作は、祈ることを考えさせられる。不公平な人生の中でもあがいて、全身全霊で祈って、そして、最後に見えてくる希望の光とは何か――。これを読み終えたときに、自分もラストシーンと同じように、思いを込めて本を閉じた。



















 

 

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