7/12 川上弘美+山口マオ『椰子・椰子』


 もぐらと一緒に写真を撮る。ベランダにお節介な鳥の兄弟が住み着く。ジャングルと化した渋谷を探索する。中くらいの災難に見舞われる――。子供のいる専業主婦「わたし」が過ごす、当たり前だけど奇妙な日常譚。

 文章は川上さん、画は『猫町』などを描いたイラストレーターの山口マオさんがそれぞれ担当した一冊。発行は一九九八年。


 川上さんのまだ初期の方の一作なので、『神様』のような不思議のエッセンスが色濃く感じられる。もぐらや鳥がしゃべるのは慣れっこだけど、既婚者の「わたし」に片思いの相手がいたり、恋人が出来たりと、謎の矛盾があるなぁと思っていたら、あとがきによると、自分の夢をもとにした話もあるらしい。

 そういう経緯があるためか、ストーリーというよりも、季節ごとに「〇月×日」で区切られた日記風の構成で、それぞれの季節の終わりには短編小説が一作挟まっている。甥っ子の引っ越し先のアパートの話や、親族会議の話など、声を出して笑っちゃう内容もあるけれど、片思いの相手から牡丹の花をもらった話のように、ちょっと切なくなる話もあった。


 そんな彼女の日常を彩るのは、山口さんの挿絵。絵画の技法についてはあまり詳しくないけれど、ペン画とか水彩画とか版画とか、いろんな技法で描かれた絵が次々現れる。時々、立体物が出てくるのにも驚いた。絵は文章そのまんま表しているわけではないので、その響き合いも楽しかった。

 生活で起こる出来事は奇妙極まりないけれど、人間関係で抱く思いには結構共感できる。久しぶりに会った友人からの告白に、胸が締め付けられる感じとか、片思い相手からもらった手紙を読んでからの反応とか。特に恋愛関係のあれこれが鮮やかで、川上さんは「小学生の恋愛みたいだと言われたことがある」と話していたけれど、そこが好きなんだなぁと再確認した。
















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