2023年に読んだ漫画まとめ


 こちらのエッセイ、漫画作品に関しては、完結まで読み終えた分の感想を書くと決めている。

 だけど、二〇二三年は漫画も結構読んだので、それについてザックリと今の感想を書き記そうと思う。




・ポムピョイ・マリー、ヴェルマン・ファルマンの『かわいい闇』

 フランスのカラーコミック。お茶会をしている三人の少年少女達。しかし、天井が崩れ出してしまい、慌てて逃げ出す。彼女達が飛び出したのは、森の中で横たわる少女の死体だった。森の中で生きていくことになった小人の少年少女の物語。

 小人たちはデフォルメされて、かわいい見た目をしているが、残忍な性格で仲間を蹴落とすし、リアルな自然が容赦なく襲い掛かってくるので、死者も多い。そんな中で、一番メルヘンな脳みその主人公の女の子が、どう成長していくのかに注目した。




・詩野うら『有害無罪玩具』

 発売禁止になった未来のおもちゃを集めた博物館に社会の授業で訪ねた少女の体験記の表題作他、永遠の時間を何も考えずに漂い続ける人魚の物語『金魚の人魚は人魚の金魚』、時間の止まった夜で暇潰しをする女性の『虚数時間の遊び』、水を通してお盆に死者と再会する『盆に復水 盆に帰らず』の計四編。

 命や倫理観や時間など、当たり前に存在しているものに対して、純粋な問いかけをして来るので、こちらの価値観がぐあんぐあん揺らされる。この一冊を読む前と読んだ後では、自分という存在がどこか違ってしまっているような気がする一冊だった。




・荒木飛呂彦『岸部露伴ルーブルへ行く』

 ルーブル美術館にて、この世で一番黒い色で描かれた絵を見た経験を話す漫画家の岸部露伴。その発端は、十年前、十七歳だった露伴が祖母の家でとある女性と過ごした夏から始まった。『ジョジョの奇妙な冒険 第四部 ダイヤモンドは砕けない』の登場人物・岸部露伴を主人公にしたスピンオフシリーズのカラーコミック版。

 少年・露伴の淡い初恋を切なく、官能的に描いた前編と、最も黒い絵に関する謎と恐怖に迫る後半の二部構成。やっぱり、荒木先生の書く人体は素晴らしい。実写映画も面白かったが、こちらの方が好きかも。




・漫画:久住太陽、脚本:杉浦理史、企画構成:伊藤隼之介『ウマ娘 シンデレラグレイ』

 競走馬の名と魂を引き継ぐ少女・ウマ娘が存在する世界。地方都市笠松出身のオグリキャップは、並々ならぬレースの才能を見出され、中央へとスカウトされる。強大なライバルのタマモクロスとの最後の大勝負の経て、名実ともに最強となったオグリキャップの元に、新たなライバルたちが挑んでくる。

 十一巻の二回目の天皇賞(秋)まで読む。オグリサイドの話ももちろんだけど、彼女に挑むメンバーの事情とか心情とかも細かく描いているので、言い方悪いけれど、みんな勝って……! というなるまで感情移入してしまう。メジロアルダンのお嬢様な雰囲気とはかけ離れた、勝利への渇望と探求心には、ゾクゾクさせられた。




・入江亜季『北北西に曇と往け』

 アイスランドで祖父と共に暮らしながら、探偵稼業で日々の小銭を稼ぐ日本人の御山慧。彼には「車や機械の言葉が分かる」という家族も知らない秘密があった。祖父の車を転がしながら、依頼をこなす慧だったが、日本で叔父夫婦と暮らしている弟の未知嵩と連絡が取れなくなっていることに気が付く。

 アイスランドの自然とグルメと生活とを細かに描いて、旅行ものとしての楽しさもありつつ、慧の弟の未知嵩の周辺は、死者も出ていて中々に不穏。最新刊まで読んだのだけど、これ、場合によっては最悪の結末もあり得るんじゃないか? と今からでも戦々恐々している。




・鈴木裕斗『SAKAMOT DAYS』

 伝説の殺し屋・坂本太郎。彼は裏社会では恐れられた存在だったが、ある日恋に落ちてあっさりと引退し、家庭を持った現在では太ってしまった。そんな坂本が営む商店に、殺し屋時代の相棒であるエスパーのシンがやってくる。元最強の殺し屋が、人を殺さない平穏な日常を望むも、なんやかんやでトラブルに巻き込まれてしまうアクションコメディ。

 七巻の死刑囚編まで読み終える。最初の方の、コメディ色が強くて頭空っぽでも楽しめるエピソードも好きだけど、×スラーが登場してからは、物語がグッとシビアに引き締まった印象。現在の坂本と×の間の実力差は大きいけれど、ここからどう挽回していくんだ? というのも、この先の楽しみの一つ。あと、好きなキャラは一芸特化型のスナイパー・平助。彼にも注目したい。


・那波歩才『ALIENSAREA』

 両親を火事で亡くし、幼い弟と妹を養うために、アルバイトを掛け持ちする男子高校生の立浪辰巳。だが、火事に巻き込まれたあの日以降から、異常な回復力を持った右腕が、最近痺れるようになっている。そこへ、異星人が現れ、辰巳と家族に襲い掛かる……。地球よりも高度な文明を持つ異星人を取り締まる、警察内組織が舞台の少年漫画。

 ジャンプで連載されていたが、全三巻で打ち切られてしまった漫画。まあ、打ち切られた理由はなんとなく察するけれど、でも、ストーリーを最後まで追いたかったなぁと気持ちが強い。辰巳の上司にあたる写楽の、飄々としていながらも芯がしっかりしているキャラクター、好きだったなぁ。




 以上が、二〇二三年に読んだ漫画。二〇二四年も、色んな漫画を貪欲に読んでいきたい。















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