11/24 朝倉かすみ『田村はまだか』


 北海道の繁華街・ススキノの場末のスナック「チャオ!」にて、常連客の永田太一がクラス会の三次会として、四人の男女を連れてきていた。彼らは、小学校卒業以来に一度も会っていない同級生の田村康志を待っているのだという。そうして、田村に興味を持った「チャオ!」のマスター・花輪春彦に、彼の波瀾万丈な半生を語り始めた。

 友人を待っている時間に、四十歳を迎えた五人と四十二歳のマスターとが、田村のことや自らの半生を振り返っていく連作短編小説。二〇〇八年発行。第30回吉川英治文学新人賞受賞作。


 時代背景を考えると、スマホが無かった当時、今よりも濃く「待つ」という行為をしていたんじゃないかなぁと思う。携帯を何度も見て、相手からの連絡が来ているかどうかを確認して、ワクワクドキドキしながら、待ち続ける……そんな、時間を意識するような「待つ」感覚を思い出させた。

 それから、四十歳という年齢のリアルが良い。人生の酸いも甘いも経験して、かつての小学生だった彼らも、関係が変わってしまったり、心がすれてしまったりと、免れない変化がある。それでも、田村を待ち続けるという理由とは……というのが分かった瞬間に、胸がいっぱいになった。


 物語の構成としては、一話毎に、それぞれが自分たちの人生の重要な局面を思い出すというものなのだが、それを読んでいる人にしか分からない秘密が隠されている。ラストシーンに怒った奇跡も、読者にしか分からないものなので、それで締めくくるので、しみじみと余韻があった。

 余談だけど、こちらの作品、私が知ったのは昔放送された「王様のブランチ」の本紹介のコーナーだった。当時中学生、面白そうだから読みたいと思ったけれど、タイミングを逃し続けてやっと読めた。正直、アダルトな描写もあるので、ここで読めて良かったと思う。






















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