12/19 ※ネタバレ注意 萩尾望都『11人いる!』
地球人類が宇宙に進出し、他の惑星の住民たちとも交流できるようになった遥かな未来。宇宙大学国の最終試験に挑む少年たちは、十人でチームを組み、五十三日間をある宇宙船・
一九七五年に『別冊少女コミック』に全三回連載されていた、本格SFの少女漫画。私が読んだのは、「続・11人いる! 東の地平・西の永遠」とおまけ漫画の「タダとフロルのスペース ストリート」も収録した文庫版。
テレパシーに近い直感力を持つタダを主人公に、王位継承者のバセスカ(通称・王様)や、少女と見まごうほど美しいフロル、皮膚に鱗が生えているヌーなど、個性豊かな少年たちが、十一人目は誰かと疑ったり、降りかかるピンチを力を合わせて乗り切ったりと、全部で三回だけとは思えないほど、最初から最後まで手に汗握りながら読んだ。
本編に入る前に、地球人類が宇宙に進出してから、他の惑星の人類と出会ったり、三つの大国からなる星間連盟に加わったりするまでの過程がざっくりと語られている。その後も、それぞれの星の事情や生きる者たちの生態なども判明してきて、わくわくした。
だからこそ、それぞれが試験に合格したい強い思いも分かってきて、十一人目の正体や潜入の目的もすごく気になるけれど、どうか丸く収まってくれ……! と祈るような気持ちで読んでいった。だから、ハッピーエンドになったのがとても嬉しかったりする。
そして、タダとフロルの関係とラブロマンスね。後半で急に少女漫画し始めたから、吐血しそうなほど悶えた。女性として生きるか、男性として生きるか、二者選択を迫られていたフロルだけど、女性でも男性でも、そのままの生き方でいいと言ってくれるただの存在は、とても有り難いんだろうねぇ。
続編の「東の地平・西の永遠」は、王様と
「11人いる!」は命の危機はあったけれど、なんだかんだで守られていたんだなと感じてしまう。十一人の中から、死者が出てしまったことがすごくショックだった。それでも、行動して、未来を見据えた先に、光が見えるのだと信じたくなる。
おまけ漫画もほのぼのしていて良かった。タダとフロルの関係も良いけどね、運命によって「僧侶」となってしまったヌーが、学生たちと年相応なことで楽しんでいるところにぐっと来た。
最初から最後まで、隙のない一冊だった。後世に、色々影響を与えたというのも納得。だからこそ、もうタダとフロルの物語は読めないのかと一抹の寂しさを抱いてしまう点まで、完璧だった。
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