2/5 スケラッコ『盆の国』


 関西のある田舎町・六堂町で夏休みを過ごしている中学三年の女子の秋。彼女には、お盆になると、地元で「おしょらいさん」と呼ばれるご先祖様たちが見える体質だった。亡くなった愛猫やおじいちゃんも帰ってきていた8月15日、「ずっとお盆で良いのに」と思った彼女は、夜中に空を覆い黒い渦を目撃し、白髪で浴衣姿の謎の青年と出会う。その翌朝、なぜか町は8月15日のままで……。

 『大きい犬』でデビューした漫画家のスケラッコさんによる、一巻完結の漫画作品。柔らかでのびのびとした線によって、お盆という特別な時間を、夏の情景と青春たっぷりに描いたボーイ・ミーツ・ガールもの。


 スケラッコさんは、絵が上手いとか下手だとかを超越した、唯一無二の漫画さんだと思う。ぱっと見で誰が描いたのかが分かる絵柄なのだが、それ以上にこの線はこの人にしか描けないという個性が強い。

 主人公の秋のデザインも言うことなしだが、それ以上に目を惹くのは、おしゃらいさんたちだ。半透明で、生前の体よりも小さくなっていたり、頭が一部だけになっていたりと、この世のものではないと一発で分かるし、それらが道端や屋根の上にいるという情景も魅力的。あと、恐らくだが、死んで間もないおしょらいさんは、生前の姿とあまり変わらないように描かれているのにも、多分意味があるのだろう。


 秋は夏夫と共に、お盆が続く謎を明かそうとする。しかし、お盆が何度も繰り返されるごとに、だんだんと町中が変化していって……。最初はほのぼのしていただけに、この緩急が中々怖い。おしょらいさんのことを、秋と同じく親しみを持ってみていたので、生者と死者は全く違うものだと言われているような気がした。

 夏の冒険ものは、とてもキラキラしている半面、すごく切なく感じる。それはきっと、夏が終われば、みんな成長してしまうという合図なんだと思う。そんなことを考えてしまうような、良質なジュブナイル漫画だった。

































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