第32話 決着

絶対絶命のピンチ。


ハサンは軍荼利明王の化身術を使い切り、

体力を落とし動けない。


セシアはドテチンとレオナルド熊、

魔獣ヒババンゴを

邪神アドヴァンに召喚して攻撃する。


その間にハサンの回復に努めるが、

力の差が歴然としている。


それに本体を滅しても、

直ぐに復活してしまう。

と言うことは、コアは別にあるはず。


どこだ?

周囲を見渡しても、

それは見当たらなかった。


や、やばいぞ。

ハサンは動けない。


ドテチンはアドヴァンの一振りで

吹っ飛ばされ伸びている。


レオナルド熊もあっさり、

そのパワーはいなされて

壁に激突し、首まで埋まり泡を吹いてる。


魔獣ヒババンゴも応戦するが、

全く効いていない。


援護を頼もうとした、ジンタンとメイだが

シローヌとの一戦で手が回らない。


その時、メイが大魔法

大地震ビッグマグニチュード』を発動する。


巨大地震が王都の王城のみを襲う。

大地に亀裂が入り、大きな地震により

身体の踏ん張りが効かない。


「今だ!」

ジンタンはロシーヌがよろける隙を狙い、

ジンタン流剣殺法「流」でシローヌに斬りかかる!


惜しい!

間一髪でシローヌは交わしたが、

胸に付けていた紫のブローチが割れた。


シローヌは『はっ』として、

邪神アドヴァンを見る。


すると、形勢は明らかにロシーヌ、

アドヴァン側が有利に関わらず、

シローヌのみ消えたのである。


「よし!後はアドヴァンのみだな!

全力で倒すぞ。」

ハサンは残りの力を振り絞り、

最後の化身を挑む。



『ノウマクサーマンダーバーザラダーセンダー

マーカロシャナーソワタヤウンタラターカンマン!

顕現せよ!愛染明王!』


憤怒の炎を身に纏い、

愛染明王に顕現する。


総力戦だ!しかし、核が、分からない。

このままやってもジリ貧だ。


いや、四の五の言っても始まらない。


愛染明王の力で三鈷剣の最大奥義

愛染ミステリアンウェーブを出すしかない!


いくぞ!

『愛の力でお前を許す!

愛染ミステリアンウェェェェンヴ!!』


俺は成り切っていた。

そう、ヒーローになりたかったのだ。


今愛染明王を具現して分かる。

アヤカシは倒すのが目的じゃない。

許すのだ。赦すことが愛なのだと。


10の月の輪と化した

巨大な衝撃波、そう。

以前、山の山頂を切り崩したのと比較にならない

強烈な月輪がアドヴァンを襲う。



ギャーーーーー!



断末魔ってこの事を言うのか。


アドヴァンは消滅し、

その体を切りさき、衝撃波は余力で

城の本丸をも粉々に破壊した。


やりすぎたかな?

でも、どうせ復活するだろう。


さあ、核はどこだ?


「みんな!核を探せ!

核をやらないとアドヴァンは復活する!」


ジンタンとメイ、シオリ、ドテチン、

レオナルド熊、セシアは周囲を観察する。


しかし、アドヴァンの核は見当たらない。


かれこれ10分ほど周りを探しただろうか。


見つかんねーなー。

どーなってんだ?


そして気付いた。あれ?

復活してなくね?


20分くらい経過して、

アドヴァンが復活しないで倒したと

皆が気付いたのである。


でも、なんで?


ジンタンが口を開く。


「まさか。あの時の胸のブローチ。

ロシーヌが付けていた胸のブローチが、

邪神の核だったとは。」


周りで震えながら戦闘を見守っていた兵士達は、まさか国の宰相が邪神だとは気付かなかったようで、邪神が倒された今、

抜剣していた、その剣を鞘にしまう。


「聖騎士ハサン様。申し訳ありませんでした、

まさか宰相が邪神だったとは。

こんな事をして、虫のいい話と思いますが、

敢えてハサン様にお願いの儀があります。

陛下へ会って下さらぬか。

陛下の邪神の呪いを解いてくだされ」


カンデンブルグ国王随一の武将

将軍サンダルがハサンの前に頭を下げる。


ハサンは王に会う。

カンデンブルグ国王は、

邪神からの呪いから開放されていた。


「私は長い夢でも見ていたようだ。

頭の中の靄が晴れたようだ。

そうだ。兄上をウェーダーの兄上を

牢からお出しせよ。」


センダー国王、カンデンブルグ8世は改心し、

民を思いやる良き君主として歴史に名を残す。


ウェーダー卿は宰相としてカンデンブルグ国王を支えるのである。


カンデンブルグ国王は、ハサンら一行に礼を述べる。


「ハサン殿。此度は貴殿らの力に助けられた。

まさか邪神に意のままに操られていたとは、

王として恥ずかしい。


これからは民のためにこの人生を捧げようと思う。

ハサン殿の旅で入り用があれば、

なんなく申して欲しい。

センダー国が国を上げて、

そなたらの魔王討伐を支援させていただく。

しかし、ハサン殿。豪快に城をここまで壊すとは。」


ワッハッハッ!

大団円で笑い合う兵士と我々一同。


良かった。

カンデンブルグとウェーダーの兄弟も

センダー国もこれで変わる。


例をして、王室を出ようとした矢先


わらわは死んではおらぬぞ。

そなたらが、倒したのは

邪神アドヴァンの欠片である。

まだ終わらぬ。せいぜい今のうちに足掻くがよい。』


心の中に直接響き渡るかのように、

アドヴァンは恐怖の地から唸るような声で、語り、やがてその気配と共に声も消えていった。


邪神アドヴァン、お前も必ず赦してやる。

浄化し、あの世に送ってやる!


今一度気を引き締めるハサンであった。


次回へ続く

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