第31話 軍荼利明王
魔王城……。
魔将軍アスタロットは、
魔王スマターに報告する。
「今、聖騎士が邪神と戦闘中です」と。
魔王スマターは元聖騎士である。
しかし、
としての記憶は消えている。
聖騎士同士の繋がりであれば、
場所の共有や、瞬間転移、念話が可能なのだが、魔王へとの転生した為、
それは使えなかった。
邪神アドヴァンめ、
早々に聖騎士に目をつけたか。
しかし、何故だ?
何故こうも焦る?
何故、聖騎士をこうまで始末したがるのか?
邪神を滅ぼす唯一の鍵が、
どうやらそこにあるらしい。
聖騎士共よ。
先ずはお手並み拝見といくか。
魔王城から、事の成り行きを静観する魔王であった。
その動向をつぶさに観察する者がいた。
魔将軍ダロムである。
ダロムは、独り言のように呟く。
「スマターは動かず」。
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ジンタンは焦っていた。
レンタン流剣殺法が、
ことごとく返される。
「レンタン流剣殺法
「レンタン流剣殺法
ば、馬鹿な!!
見せのフェイント『雷』から、
本命の二の太刀『流』まで
奴は受けきった!
しかも二の太刀は小太刀で。
何という技の使い手。
焦っていたのは、メイも同様だった。
減速の魔法や、幻術の魔法、
更には炎の魔法や風の魔法まで
効果を打ち消してしまうのだ。
シローヌに魔法は効かない。
挙げ句には、ジンタンに倍速の魔法と、
スタミナ増加の魔法を駆使し、
エンチャントしながら後方支援してるにも
関わらず、シローヌが推しているのだ。
つ、強い!
だが、ここで負けるわけにはいかない!
メイは、大型呪文
『
を発動すべく詠唱を続ける。
ジンタンさん、もう少し、
あともう少し踏ん張って!
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一方ハサンは印を組み、
化身の術を発動する。
『ノウマクサーマンダー
バーザラダーセンダー
ソワタヤウンタラターカンマン!
いでよ!
邪神を滅せよ!祓えよ!』
軍荼利明王に化身し、三鈷剣を構える。
紅蓮の炎を身に纏い、軍荼利明王は
真言を唱えると、真一文字に剣を構えて
邪神アドヴァンに振り抜いた。
『
アドヴァンの半身は裂かれ、
燃え盛る。
「グォェェーーーッ」
断末魔を放ち、アドヴァンは消滅する。
誰しもが、ハサンの勝利と思った。
その時、『なんてね。』
今切り倒した筈の邪神の声だ。
女だてら珍沈同盟かよ!
なんて突っ込みを入れる間もなく
アドヴァンは復活を遂げる。
『その程度か聖騎士は』
化身の術は解け、その場にへたり込むハサン。
まじか!ガス欠だ……。
無念。
次回へ続く
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