第17話 悲劇の魔女アネッサ

『井戸の魔女アネッサ』

純白のドレスを着た死霊であるらしく、

夜0:00を過ぎないと出現しないとのこと。


村長から依頼を受けたが、

どうも胡散臭い。


村長は何かを知ってるな?


ハデルの勘と言うか、

この村は何かを隠している。


直感的にハデルはそう感じてた。


『目は口ほどに物を言う』

昔の人はよく言った物だ。


村長の目は明らかに泳いでいた。


しどろもどろで額から冷や汗が

滲んでいるのも見えていたのだ。


死霊や幽鬼の類のアヤカシならば、

ファイヤーフレイムで焼けばいい。


安直に考えていた。

アネッサには、魔法そのものが効かないのだ。

破邪の剣の破邪効果すら無効にする強力な瘴気を纏い、ハデル達に長い爪で襲いかかる。


『カェセェェ、カェセェェ!!』 


妙な叫び声を上げている。


既に数時間経過している。

お互い決定的なダメージが無いまま、

無為に時が過ぎる。


疲労困憊だ。


そんな時、メリーはハデルに話しかけた。

「何かを返してほしいのでは?」


そ、そうか。この魔女には何かがある。

一旦引き上げだ。  


メリーとハデルは一旦撤退することにした。

戦略的撤退。


午前0時00分の前に、

アネッサの謎を解くのだ。


アネッサは井戸から離れることなく、

追っては来なかった。


そして日の出と共に消えていったのである。


「村長はいるか!」

ハデルは仮眠を取った後に、村長に詰め寄る。


そこには、村長の姿はなく

村長の息子夫婦が留守を任されていた。


「私は村長の息子ゲドと言います。

父は生憎不在にしていますが、

聖騎士様何か御用でしょうか」


心無しかゲドも又目が泳いでいるのである。  


「アネッサの過去を知らないか?

アネッサは『返せ』と言っていたぞ。

まさかアネッサの形見を

保管してないだろうな?」


ハデルはゲドも絡んでいると睨み、

カマをかけてみた。


「あわ、あわわ。アネッサ済まなかった。

返す!『この首飾り』は。」


経緯を聞くと、元来ゲドと

アネッサは恋仲で、

ゆくゆくは夫婦の契を

交わそうとしていたらしい。

 

しかし、村長の反対を受けて、

二人の仲は引き離された。


それだけなら、アネッサは

幽鬼と化すことは無かっただろう。


なんと村長は、ゲドと共謀し

アネッサの家に火を放ったのである。


病弱の母親と共にアネッサは焼け死んだ。

生きながら焼かれたのである。


信じてた人に、愛する者に裏切られた

アネッサの絶望は

計り知れないものだったろう。


あろうことか、

遺骸は古井戸に捨てられ放置された。

埋葬すらされなかったのだ。


そして、二人の愛の証として共同で作った

『守りの首飾り』をゲドは後で売却しようと、

アネッサな焼け落ちた家から盗んだのである。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「ひ、ひどい。酷すぎる。あなたは外道よ。」

メリーは涙を浮かべながら

抗議と侮蔑を含んだ目で

ゲドを見下げる。


「そんな事をすれば化けて出て当然だ。

でも、何故焼き討ちなど。

そこまでしなくても」


実は村長とアネッサの母も、

不倫関係だったとのこと。


そして双方の利害は一致し、

焼き討ちに至る経緯へと発展したようだ。


そしてアネッサの母の家系は、

動物や植物、アヤカシとも

会話ができるという特殊スキルの家系だった。


アネッサの母は「アヤカシともわかり合える。

私達は神そのもの。全体であり、全てである」

と口癖のように話していた。


この国では、『全体教』と言う

カルト宗教認定されていた。


つまり、魔女狩りとして

私怨も混じり焼かれたのである。


アネッサに守りの首飾りを

返さなければと誓うメリーとハデルだった。


ハデルは呟く。

「なぜ魂になって尚、人間のように争うのか」

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