足助敏《あすけさとし》

1

目が覚めると、狭い部屋。

これは…すぐるの部屋か。

で、優は…いないじゃんかよ!あの野郎。


置き手紙が置いてある。


「鍵はポストに入れていけ」


ひどくない?親に向かってこんな雑な。


飯とかも用意してなさそうだし、勝手に冷蔵庫をあさる。…あいつ、スイーツだらけじゃん。腹にたまらないじゃねーか。冷凍庫に弁当があったから、これをレンジ解凍して食べるか。


明日から仕事だし、だらだらするか。にしても、守が家に入れてくれないとは。ちょっと切ないなぁ。守が住んでるところなんて、ここの倍以上の広さだろうに。


飯食いながら、携帯を見る。なになに、弟のりゅうが何回もかけてるし。


しょうがないから、かけてやるか。


「なんだよ」


「…別れたって本当なのか?」


「えー、それ誰に聞いた?優?」


「いや…守が聞いてきた」


おぉ、バレてんのかよ。さすが守だ。


「そうだけど?」


「…なんで!」


「じつは、優も別れてんだわ。実よりも先に。俺もさぁ、もうちょい夢見たくなってー」


「は?」


「若い子を嫁にしたい!」


「…またナンパでもする気?」


「ふふん。今度は院内の美人看護師を嫁にしようと思ってな!子供好きなやつを見つけて早くものにしたくてな」


「病院追放されるぞ…」


「バレなきゃいいだろ?あと、実の子供はどうにか世話できないのか?」


「無理だ」


「あーそう。諦め早いな。優の子供は俺がなんとか奪ってやる」


「は…子供?いたのか?」


「いるから結婚せざるを得ない感じだったけどなー」


「…そうだったのか」


「隆もまた子供作れよ」


「いや…さすがにもう無理」


「つまらないやつだな。俺は張り切ってるぞ!優に負けないように、嫁先に見つけてやらぁ!」


「…子供かよ」


ったく、隆はそういうこと考えないからな。嫁と付き合ったの高校生の頃だろ?お前よくそんな続くよなぁ…。

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