【#65 15年越しの計画】
-5107年 3月28日 0:01-
ホーブロー神国 チェチェヤ大聖堂
「ハッハッハ♪それは何のお祝いですかな?まさか、これからアンデッドどもに殺されることを自ら祝福してるとでも?」
枢機卿ラムサールは声高に笑った。
「おい、三男……こりゃどんなボケだ?」
「いや…けっしてボケたつもりでは…」
「この状況じゃ笑えませんよ、みっちゃん」
「さっきは指先から稲妻がビリビリッと…」
「ミッチー!さっさとそのビリビリッてやつをかましてくれ!俺はゾンビになんかなりたかねぇんだ!!」
アインの冷たい視線と、ククタの落胆と、パルマの恐怖に、三男は大いに焦った。
焦りまくった。
「チッ、仕方ねぇ……パルマ、ゾンビの仲間入りしたくねぇなら、矢が尽きるまで射ちまくれ!一番距離の近いヤツから狙うんだ!!」
アインは剣を振りかざし、ゾンビの群れに自ら突っ込んでいった。
ぬぉぅりゃぁぁぁぁーッッ!!
「そんな……一番近いヤツなんて、どいつも似たよな距離なんですけどもぉ~……ちっくしょおぉぉぉッッ!!」
パルマも、やたらめったらブルージュの弓を射ちまくる。
ビンッ! ビンッ! ビンッ!
三男の言う通り、大挙して押し寄せてくるスラム装束の連中は、誰一人として生きている気配が感じられなかった。
アインの剣が胴体を真っ二つにしようが首をはねようが、血が飛び散ることもなく、まるで砂袋を斬ってるような手応えしかない。
ブルージュの弓から放たれた矢が一度に数人の頭を射ち抜いても、全員が呻き声ひとつ上げず、その場に崩れ落ちていく。
「こいつら何なんだよ……俺は何と戦ってんだ?すげぇ気色ワリィんですけど……くそ~ッッ!」
「三男ッッ!門で待ち構えてた連中を倒した時のことを早く思い出せ!!俺とパルマだけじゃ、こんだけの人数倒しきれねぇぞ!!」
奮闘するアインとパルマだったが、圧倒的な数のゾンビを前に苦戦を強いられていた。
「ヤベェ!もう矢が尽きた!……ただでさえ接近戦は苦手なのに、ゾンビ相手に小刀なんかじゃ怖すぎて戦えねぇよ!」
「チッ!…パルマ!これ使え!!」
アインはフォロボの剣をパルマに投げ渡し、自らは体一つでゾンビに立ち向かう。
「うぉぉりゃぁぁぁぁーッッ!!」
アインは次々とゾンビを殴り倒し、蹴り飛ばし、長椅子を振り回し、長机を放り投げ、剣が無くても変わらぬ強さを発揮した。
パルマもパルマで、アインから受け取った剣を手に善戦していた。
実は、幼い頃からアインと共に剣術の稽古をつけてきたパルマの剣技は、アインより劣るとは言え、そんじょそこらの兵士に勝る腕前なのだ。
「怖ぇ~ッッ!…めちゃくちゃ怖ぇ~ッッ!……うぎゃぁぁぁぁ!こっち来んなぁぁぁぁ!」
ただ、そんじょそこらの幼子に負けない臆病っぷりのせいで、剣技の凄さが目立たないだけだった…。
「お二人ともまだ若いのに、噂に違わぬ腕前☆ しかし、これだけの数を相手に、いつまで戦い続けられるか……見ものですな♪」
枢機卿ラムサールは、ニヤけながら戦況を見守った。
現に奮闘を続けるアインとパルマではあったが、数的不利な状況は変わらず、徐々に包囲の輪は小さくなっていった。
大聖堂の入口から次々と沸いてくるゾンビの圧力に押され、四人は自分たちでも気付かぬうちにジリジリと後退し、ミカの眠る祭壇までの距離が少しずつ縮まっていった。
「あまりコチラに近付かないでいただけますかな?アンデッドどもは我々でも完全な制御は不可能……奴らは体の乾きを潤すために、ただただ生き血を求めるだけの生きた屍。これ以上祭壇に近付いて、我々はもちろん、せっかく手に入れた聖女にまで襲いかかられては目も当てられませぬ」
ラムサールは何かのスイッチを押した。
すると、祭壇前の床が開き、深い大きな穴が出現した。
「さあ、これでコチラは安全☆ 穴の深さは計り知れない……落ちれば命はないでしょう♪これであなた方はそれ以上の後退りは出来ないということです♪さあ、どうします?アイン王子♪ハッハッハッハ♪」
自分たちの身の安全を確保し、勝利を確信したラムサールは、挑発的なセリフでアインを煽った。
「くそ~ッッ!……三男!まだ思い出せねぇのか!」
「こんな所で死にたくねぇよぉ~!ちくしょうッッ!……」
アインとパルマの体力も限界が近い。
「みっちゃん!思い出してください!一人で門に向かったあと、どうなったのか!」
ククタも必死で三男を急かす。
「門番が四人いて…」
「それから?」
「槍で突かれてポロル神父にいただいた服に穴が空いて…」
「それから?」
「ちょっとカチンと来ちゃったもんですから…」
「それから!!」
「戦闘モードに切り替えまして…」
「戦闘モード??」
「はい、敵を倒すための戦闘モードです」
「…………間違いなくそれですね(-_-)」
ククタは溜め息をついた。
「え?戦闘モードに切り替えるんですか?!さっき初めてやって知ったんですが、私、あれ嫌いなんですよね……戦闘モードの間、記憶が飛ぶんです……」
「何バカなこと言ってんだ!今この状況をよく考えろ!!好きとか嫌いとか言ってる場合か!!」
アインはゾンビと戦いながら怒鳴った。
「ミッチー!早くしねぇと俺たち全員オダブツなんだぞ!!さっさと戦闘モードに切り替えて、ビリビリかましてやれ!!」
パルマも怒鳴って命令する。
「わかりました……ボスもマスターもそう仰るなら……戦闘モードに切り替えます!」
黒いガラス越しに光る三男の目が、青白い光から赤に変わった。
「ボス、マスター、ククタさん、危ないから床に伏せてください」
三男はそう言うと、右手を高く掲げ、人差し指を突き立てた。
「パルマ!ククタ!伏せろッッ!!」
自らも床に伏せながらアインが叫んだ瞬間、三男の指先から幾筋もの稲妻が放たれた。
ビリビリビリビリッッッ!!
青白い閃光が100体以上のゾンビの頭を貫いて、三男の指先と繋がった。
勝負はまさに一瞬だった。
稲妻に貫かれたゾンビたちは、バタバタとその場に崩れ落ち、乾いた体からは火の手が上がった。
「な、なんだ、そいつは……。今の攻撃は一体何だと言うのだ……」
「どうも初めまして♪気軽にみっちゃんと呼んでください☆」
敵を殲滅したことで戦闘モードを解除した三男は、あらたまって挨拶した。
「やっぱりスゴイですよ!みっちゃん!!」
「ミッチー、もう戦闘モード解除したのかよ……まだ目の前に二人残ってんのに…」
「まぁいいだろ、人間二人だけならヘロヘロになっててもブッ倒せる♪ 一気に形勢逆転しちまったな?どうする?枢機卿さんよ♪」
今度はアインがニヤけて、挑発的にそう言った。
「おのれ~…こうなってしまった以上、やむを得ん!!」
ラムサールは、腰から剣を抜いた。
変わった形のその剣は、大きな弧を描いた鎌のような独特な形をしていた。
「いい根性してんじゃねぇか♪その変な形の剣で俺とタイマン張ろうってのか?だったら、まずは床の穴を塞いでくれよ♪」
アインはパルマからフォロボの剣を受け取ると、切っ先をラムサールに向ける。
「私が勝ち目のない勝負を挑むと思っているなら大間違いだ♪もちろん、床の穴を塞ぐつもりもない♪」
枢機卿ラムサールは、そう言いながら持っていたパルマのリュックを開け、中からレッドカメリアの花を鷲掴みに取り出すと、それをムシャムシャ食べ始めた。
「あ~ッッ!……てめぇ!俺たちが苦労して集めたレッド何とかの花を勝手に食ってんじゃねぇ!!」
パルマの文句など無視して枢機卿は食べ続ける。
大司教は何も言わず、奇異とも取れる枢機卿の行動を見ていた。
「俺と戦わねぇなら、何する気だ?」
「フン♪お主を捕り逃したとなれば無事で済むわけがない。教皇様より極刑を言い渡されるのは火を見るより明らか……。ならば、この命と引き換えに、聖女も道連れにするまでだ!!」
ラムサールは剣を持つ手を振り上げた。
!!………( ̄△ ̄;)
「やめろぉ~ッッッ!!」
アインが飛びかかろうにも、祭壇まで一瞬で間合いを詰められる距離ではない。
アインたちは、大きく空いた穴の手前まで詰め寄るのが精一杯だった。
ガシッ!
ミカの胸元に振り下ろされた枢機卿の腕を、寸でのところで受け止めたのは大司教だった。
「?!………大司教、何をする?」
「ミカには指一本触れさせぬ。ましてや、血と欲に汚れた貴様などに!」
「何だと?………手を……その手を放せ!大司教!!………ぐぐぐっ……!」
大司教が枢機卿の手首を掴む手に力を込めると、枢機卿は苦悶の表情を浮かべた。
剣を持つ手の力が抜け、束を握る手がゆっくり開いていく。
大司教は、開いた手から剣を奪い取った。
「枢機卿……貴様は、私利私欲のために、あまりに多くの命を奪い過ぎた。これは、貴様に命を弄ばれた者たちの怨念のこもった報いだと心得よ」
グサッ!……
枢機卿ラムサールの胸に、先ほどまで自らが手にしていた独特な形の剣が突き刺さった。
「大司教……き、きさま……スラム教を……タラモアを裏切る気かッッ!」
ラムサールは、胸に刺さった剣を引き抜こうと試みたが、背中まで貫いた剣はそう簡単に引き抜けるものではなかった。
口から血を吐き、2歩3歩と後退る。
「15年もの間、私はこの時を待っていた…。聖女ミカが、勇者を連れてホーブローに帰ってくる日を!………私はスラム信者ではない!私の魂は永遠にリスト教の信者なのだ!!」
「やはりそうか……きさま…我々を欺いて……」
「今ごろ気付いたか。自らの所業を悔いるとともに、地獄で慚愧の念を噛みしめるがよい……」
「くそ~……くそぉぉぉぉぉぉッッッ!………」
枢機卿は、無念の叫びを残して深い深い穴へ落ちていった。
100体以上のゾンビの体についた火は瞬く間に燃え広がり、いくつも並んだ長机や長椅子に燃え移り、やがて大聖堂の柱や壁まで炎に包まれていった……
※※RENEGADES ひとくちメモ※※
今回もネタがないので、この場を借りて、私の近況とゆーかご報告を…m(_ _)m
世間は盆休み真っ只中ですが、私の勤める会社(とゆーか私のいる部署)には盆休みなど存在せず、どちらかと言うとクソ忙しい時期なのです…
というのも、私の部署の繁忙期は9~11月で、毎年その繁忙期だけの短期スタッフとゆーのがこの時期ドカンと入ってくるわけです
なので、実は先月から面接続きで、8月に入ってからは面接+新人研修で忙殺されるわけです…
9月下旬までそれが続き、時給2000円てのが魅力なのか、最終的に私の下に100人以上の部下が出来るわけで、そんな人数、全員の名前と顔が一致する頃には契約期間が終わる…とゆーのを毎年繰り返しています(-_-;)
ダラダラと前置きを書きましたが、要するに、繁忙期が終わる11月いっぱいまで、投稿ペースが落ちてしまう恐れが「大いに」あるとゆーことを言いたいわけですm(_ _)m
それでも何とか頑張って、週に1話は更新していくつもりなので、長い目で見守っていただけたら幸いです☆ 飛鴻
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