【#60 一通の手紙】
-5107年 3月26日 7:44-
ホーブロー神国 エルマ山 古代遺跡
「べつに構わねぇよ、仲間が増えることは良いことだ☆」
「さすが私のアイン様♪心の広い男性のお手本ですわ☆」
「アインならそう言ってくれると思ったぜ♪良かったな♪ミッチー」
「これでみっちゃんも僕たちの仲間入りです♪みっちゃんと一緒に旅が出来るなんて、ホント心強いです☆」
「ありがとうございます☆ボス」
「ボス??…まあ何でもいいけどよ…」
施設内で一夜を明かしたアインたちを、トンネルの出口から差し込むホーブローの眩しい朝日が照らしていた。
アインは目覚めて早々、三人から三男の仲間入りを迫られた末、それを快く認めた。
「これからチームの一員として、皆さんのお役に立てるよう精一杯がんばります!」
三男は四人それぞれと握手を交わした。
「よろしく頼んだぜ♪ミッチー」
「お任せください!マスター」
「おい、パルマ…ミッチーってのは何だ?コイツの新しい愛称か?それに、お前がマスター??」
「三男くんは、自分に命を吹き込んでくれたパルマに恩を感じてるんです、アイン様☆」
「あのレバーを動かしたのがパルマさんなので」
「なるほどな…。ところで三男、お前たしか軍事ロボットって言ってたよな?」
「はい♪科学技術の粋を集めて造られた次世代軍事AIロボットです♪ボス」
「じゃあ、昨日の何とか砲の他にも、いろんな武器を搭載してるのか??何とか砲もそうだけど、パッと見、いろんな武器を搭載してるようには見えねぇけど…」
「それは取扱い説明書を見ないと何とも…」
「は??」
「いかんせん3000年も眠っていたもので…他にどんな武器があったか…忘れちゃいました♪」
(-_-;)(-_-;)(-_-;)(-_-;)
「取扱い説明書なんてどこにあるんだ?この施設のどこかにある説明書を探さないと分かりません…なんてこたぁ言わねぇよな?」
「それなら御安心ください♪説明書ならココにあります♪」
三男は、自らのコメカミを指差して言った。
「まぁいいじゃねぇか、昨日の大砲だけでも恐ろしい武器なんだ♪他に武器がなくても、あの大砲だけで十分な攻撃力だぜ♪」
「確かに、一瞬でこんなトンネルを掘っちゃうんだもの、タラモア鉄騎兵の比じゃないわね♪」
「プラズマ砲の威力が僕たちの味方についただけで、とんでもない心強さですよ♪」
「あ、言い忘れましたが、プラズマ砲は一度発射すると、次に発射できるのは数週間後になります。一度に大量のエネルギーを消費してしまうので、発射に必要なエネルギーを補充するのに時間がかかってしまうのです」
「数週間て…ずいぶん長ぇな…」
「逆の考え方をすれば、ありゃあ最終兵器的なもんで、エネルギーを補充する間、通常の戦闘くらいなら他の武器で十分対応可能ってことなんじゃね?」
「きっとそうですよ♪ね、みっちゃん」
「言われてみれば、そんな気もするんですが…大昔のことですのでハッキリとは…」
「何か他の武器一つぐらい思い出せねぇのか?」
「確か…腕を指先まで真っ直ぐ伸ばすと、指先から鉄砲が…」
三男はそう言いながら、右腕を天井に向けて真っ直ぐ伸ばした。
すると親指を除く四本の指先がパカッ!と開く。
「構わねぇ、撃ってみろ」
「はい、では…」
パン!
甲高い破裂音とともに発射されたのは、金や銀や赤や黄色の細い紙テープと大量の紙吹雪だった。
「……………(-_-;)」
おまけに、三男の体内に仕込まれてるらしいスピーカーからは、拍手喝采とオメデトウ♪オメデトウ♪という効果音が流れていた。
「あ、あれ?…左手だったかな?…」
三男は慌てて左腕を伸ばす。
しかし、左手の指先から出てきたのは、ハサミ、ナイフ、爪切り、缶切り、栓抜きといった十徳道具だった。
「あれ?おかしいなぁ………」
「確認のためもう一度聞くが、三男は軍事ロボットなんだよな?」
「はい、そうです♪」
「科学の粋を集めたんだよな?」
「はい、そうです♪」
「……………」
アインは目を閉じて天を仰いだ。
少し考えたアインは何か言いたそうだったが、ひとつ大きく息を吐き出すと
「まぁいい、今は戦闘状態でもねぇし、早くその頭ん中にある説明書ってやつを見付けてくれ…」
と、三男に向けて言った。
「はい…今すぐにでもそうしたい気持ちは山々なんですが…メモリーに保存されてる情報量が多すぎて、どこのファイルに保存したのか…(^^;)」
「……………」
「皆さんからは何もしてないように見えるかも知れませんが、実はこう見えて私、いま頭の中では必死に探してますので…」
「まあ、いいじゃない♪時間はタップリあるんだし、探してればそのうち見付かるわよね、三男くん♪」
「がんばります!」
「それより、もう夜も明けたんだし、さっさと下山して教会に帰ろうぜ?腹減って死にそうだ…」
パルマの催促もあって、アインたち一行は三男のプラズマ砲で作られたトンネルを抜け、エルマ山を後にした。
パルマの背負ったリュックの中には、アインを除く三人が夜のうちに崩落あとから拾い集めたレッドカメリアの花がパンパンに詰まっていた。
下山し、ウェンブリー教会に戻る道中、三男はずっと独り言を呟きながら体のあちこちを動かし、見付からない他の武器を模索した。
頭のテッペンを押さえてみたり…
耳の位置にある穴に指を入れてみたり…
5本の指を一本ずつ立ててみたり…
肘を曲げて突き出してみたり…
片膝を立てて跪いたり…
端から見れば滑稽なポージングも、当の三男は真剣そのものだった。
しかし…
頭のテッペンがパカ!っと開くと、中から白い鳩が出てきたり…
耳の位置にある穴からは、ヒモで繋がった古代国家の小さな国旗が次々と出てきたり…
立てた指先にカチ!っと火が灯ったり…
どれも軍事ロボットとは到底思えない結果に、アインは頭を抱えた。
ククタとミカも、もはや三男を励ます言葉は出てこない状況だった。
そんな中、パルマだけは
「すげぇ♪すげぇ♪」
と大喜びしながら拍手を贈っていた。
パルマの歓喜に気を良くした三男の腰がパカッ!と開くと、三男はそこから赤いスポンジのような丸い玉を取り出す。
「お!やっと武器っぽいのが出てきたぞ!」
諦めに近いアインの表情が一気に明るくなった。
「ミカさんの薬玉みたいな物かも知れません♪」
ククタの困った顔にも笑顔が戻る。
しかし…
三男はその赤い玉を左の手のひらに乗せギュッと握りつぶす。
全員が握られた左手に注目した。
完璧な間をおいて、パッと開かれた手のひらの上には、黄色い玉が2つ乗っていた。
「…………(-_-)」
「すげぇ!!なんで増えてんだ!?赤い玉はどこいった!?」
大喜びのパルマをよそに、アインは冷たく言い放つ。
「俺は三男を軍事ロボットとは思わないようにする…」
「科学の粋を集めたって言うのも疑わしいわね…」
「もしかすると古代文明における伝説の魔術師、マギー四郎かゼンジー北京がみっちゃんの開発に携わってたのかも知れません…」
ミカとククタもアインの意見に賛同した…。
一行がウェンブリー教会に着いた頃には、太陽が西に大きく傾いていた。
「ポロル兄さん♪」
「ミカちゃん♪アイン王子♪パルマさんもククタさんも♪皆さん、よくぞご無事で☆」
四人の無事な帰還を喜んだポロル神父は、すぐに三男の存在に気付き、訝しい顔で聞く。
「そちらは?もしかして、それが噂に聞くタラモア帝国の鉄騎兵というやつですか?」
「ポロル兄さん、この三男くんは古代文明が遺したロボットで、タラモア鉄騎兵とは別物よ♪」
「はじめまして♪私は、科学の粋を集めて造られた軍事AIロボットの三男といいます♪気軽にみっちゃんと呼んでください♪」
言葉を話すロボットに、ポロル神父は腰が抜けるほど驚いた。
「中に人が入ってるんですよね?」
「いいや、このロボット自体が喋ってんだよ♪鉄騎兵のように中で人が操縦してるわけじゃねぇんだ♪すげぇだろ?そんでもって俺がコイツの御主人様だ♪な?ミッチー」
「はい、マスター♪」
パルマはドヤ顔で、少し胸を張って言った。
ククタが経緯を説明する。
「神父さま、エルマ山の山頂の地下には古代文明の遺跡がありました。僕たちがたまたまそれを発見して、みっちゃんはそこに眠っていたんです。そのみっちゃんを3000年の長い眠りから目覚めさせたのがパルマさんなんです」
「ちなみに、その古代遺跡を最初に発見したのも俺だけどな♪」
「あなたのドジが生んだ偶然の産物でしょ?何を偉そうに言ってんのよ…」
「では、伝説は本当だったのですね…このロボットこそ、世界を制する神の力…」
「いや、ポロル兄さん、それはちょっと違うと思うわ…」
「絶対に違う」
それまで黙っていたアインも、ここだけは力強く断言した。
「まあ、詳しい話は夕食を食べながらでも♪今すぐ用意しますので、皆さん中へ♪」
「待ってました♪もう腹減りすぎて倒れる寸前だったんだ…」
パルマの腹の虫が、大賛成の合唱を始めた。
「あ!そうだ…大事なことを忘れてました。今朝方、教会に一通の手紙が届いてたんです、ミカちゃん宛てに」
「え?私に??」
ポロル神父は、ミカに差出人不明の手紙を手渡した。
※※RENEGADES ひとくちメモ※※
【暑中お見舞い申し上げます】
皆さん、体温ほどのクソ暑さの中、家事に仕事に子育てに、もちろん執筆活動もご苦労様です☆m(._.)m
今回もネタがなかったので、皆さんに向けて近況ノートにお中元代わりの一枚の絵を載せておきました♪
今までと違って、物語の内容とは全く関係ないものですが、暑い中頑張ってる皆さんに少しでも安らぎを届けられたらと思います(^^)
興味ある方は覗いてみてください☆
引き続きがんばります! 飛鴻
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