【#58 みっちゃんと呼んで】
-5107年 3月25日 21:11-
ホーブロー神国 未知の古代遺跡
「よろしかったら、少し力を貸して欲しいんですが…」
「ぎゃぁぁッ!!今度こそマジで出た~ッッ!」
パルマは叫んでアインの背中にしがみつく。
パルマのように叫びはしなかったものの、ミカもアインに抱き付きギュッと目を閉じた。
四人以外の誰かの声は、四人の背後から聞こえてきた。
パルマとミカにしがみつかれて体の不自由さを感じながら、アインは声のした方向へ剣を構える。
「誰だ!…隠れてねぇで出てこい!!」
しかし、どこにも人影は見当たらない…
「出て行こうにも身動きとれないんです…なので力を貸して欲しいんですが…」
声の主は、アインの呼び掛けに素直に答えた。
「どこだ!どこに隠れてやがる!?」
「けっして隠れてるわけじゃありません…ここです、ここ…壁に埋め込まれたブースの中です」
「ブース??…ブースって何だ?」
「壁に埋め込まれたって言ってますから、さっきの鉄の箱のことではないでしょうか?」
アインは二人を無理矢理引きずるように、さっき見た鉄の箱の前に慎重に近付いた。
ククタもアインの後に続く。
鉄の箱の前に立ち、二人はあまりの驚きに言葉を失った…
四人に話し掛けていたのは、先ほど見た人型の機械だったのだ。
「いやぁ、あなた方がいてくれて良かった♪申し訳ないんですが、ちょっと手を貸していただけませんか?」
声は確かに人型の機械から聞こえる。
しかし、その機械の顔に口は無く、口の部分には横一文字に5cmほどの細い溝が開いてるだけで、もちろん発する言葉に合わせて動いてるわけでもない。
「その前に、お前は何者だ?機械の中に入ってんなら、観念して出てこい」
「何者と申されましても…私は見ての通りロボットで、中に人間が入ってるわけではありません」
「あなたはロボットなんですか?」
ククタは目を輝かせて聞き返す。
「ロボットだって?!」
パルマも恐怖より興味が勝ったのか、会話に加わってきた。
「言葉を話す機械なんて…それが本当なら、古代科学ってホント凄かったのね…」
安心したミカも、すっかり落ち着いている。
アインは危険がないと感じ取ったのか、剣を鞘に納め、改めて聞いた。
「お前は人間じゃなく機械そのもの…ってことだな?それをロボットって言うのか…」
「はい。私はスターク・インダストリー社が終末戦争真っ只中の2097年、最先端科学の粋を集めて開発した次世代軍事AIロボット、開発コードKY0107-S44スペシャルエディションMARK Ⅲです」
「ずいぶん長ったらしい名前だな…その胸に書いてあるのが名前じゃねぇのか?」
「長いのは開発コードで、名前というか通称は、おっしゃる通り『みつお』と言います。三男と書いて『みつお』です。私を開発した技術者は皆そう呼んでいました。ですから皆さんは気軽に『みっちゃん』と呼んでください☆」
人型機械の胸の部分には、大きな文字で「三男」と書かれていた…。
「あなたがロボットなのは分かりましたが、AIって何ですか?」
ククタはもはや、好奇心の塊になっていた。
「AIとは人工知能のことです。頭部に組み込まれた人工知能とメモリチップによって、私には無尽蔵の知識とそこから導かれる判断力、そして、完璧な人間性が備わっています」
「無尽蔵の知識…すごい☆」
ククタの目は、少女マンガのようにキラキラ輝いていた。
「で、俺たちに何をして欲しいんだ?」
アインは冷静に質問した。
「はい、まずは私の体に繋がっているケーブルを全て外してください。引っ張れば簡単に抜けますから♪」
「これか?これを引っ張りゃいいんだな?」
パルマとククタは、何本も繋がれたケーブルを言われるままに外してやった。
アインはその様子を、警戒しつつも静かに見守る。
「ありがとうございます♪そしたら次は、背中の真ん中にある10cm四方のプレートを外してください。星型の特殊レンチが必要ですが、それは左側の壁の中央にある引出しの上から三段目に入っていますので…」
「面倒臭ぇなぁ……ほら、外れたぞ」
「ありがとうございます♪プレートが外れたら、中にメインスイッチがあります…」
「ああ、あるぞ。これのことだな?」
「おおぉぉーっとぉッッ!!!」
突然のロボットの大声に四人は大いに驚き、ボタンに手を伸ばしていたパルマは、その手を咄嗟に引っ込めて怒鳴った。
「何だよ急に!ビックリするだろッ!!………ちょっとチビったかも…」
「まだメインスイッチは押さないでください。正しい手順を踏まないと、私は爆発します」
「ちょっと!!そーゆー大事なことは先に言いなさいよね!」
「爆発ってどのくらいの規模なんですか?」
「この施設はもちろん、半径1kmは草の根一本残りません…」
「大爆発じゃねーか!!」
「すまんが、そんな危険な協力は出来ねぇ…このままお前を放置して行くが、悪く思うなよ」
アインは冷静な判断を下す。
「アイン様の放置プレイ……羨ましい…☆」
「出たよ…ミカのド変態が(-_-;)」
「私を放置して行かれるのはいいですが、プレートを外した時点で起爆装置は作動してるので、爆発まで残り2分18秒しかありませんよ?2分15…14…13…」
「だぁぁぁぁ―ッッ!さっさと正しい手順てやつを教えろ!!」
「それでは正しい手順を…。メインスイッチとは別に、赤・青・黄の3色の小さなスイッチがあると思うのですが…」
「ああ、あるよ!」
「それを、青・黄・赤の順で押してからメインスイッチを入れてください。間違っても黄・赤・青とか青・赤・黄と順番を間違えて押さないように。押し間違えた瞬間にドカン!です。いいですね?青・黄・赤ですよ。けっして赤・黄・青とか黄・青・赤とか…」
「あぁぁぁッッ!まどろっこしい!!正しい順番だけ言え!!」
「こいつ…俺たちをからかってねぇか?…」
苛立ちを隠せないアインは剣の束に手をかける。
「確か完璧な人間性が備わってるとか言ってなかったかしら?…稀にみる説明下手よね」
ミカは腕組みをして、呆れ顔でパルマとロボットのやり取りを眺めた。
「青・黄・赤です、青・黄・赤。その順で押してからメインスイッチをONです。残り時間48秒…47…46…」
パルマは復唱しながら慎重にスイッチを押す。
「青、黄、赤…よし!押したぞ!…それからメインスイッチをONだな」
カチッ…
その瞬間、ロボットの体がビクン!と脈動し、アイマスクのような形の黒いガラスが嵌まった目の部分に2つの青白い光が灯った。
体の中のどこかから、微かにゥィィィィン…という機械音も聞こえる。
「いやぁ~、これでやっと自由に動けます♪ホントあなた方には救われました♪ありがとうございます☆」
ロボットは、きっちり90°腰を曲げ、四人に礼を述べた。
「自由を取り戻せたなら良かったな」
「はい♪」
「3000年も眠り続けていたんですか?」
「はい♪」
「そんなに寝続けて腹減らねーの?」
「はい♪」
ロボットは、ずっと腰を曲げたまま会話を続けていた。
「なんでいつまでも頭下げてるのよ?」
「私の体勢を見て、何かお気付きになりませんか?」
「分からないわ…3000年ぶりに曲げた腰が元に戻らなくなった?」
「いいえ、違います」
「感動して涙してる顔を、僕たちに見られたくないとか?」
「いいえ、違います」
「じゃあ、何だってんだ?」
「背中のプレートを閉めてほしいのです」
「……………」
アインが剣を抜きそうになるのを、ミカとククタは力ずくで抑えた。
「まったく!!古代科学の粋を集めたロボットなら、そんくらい自動で開け閉め出来るように作れなかったのかね!」
パルマはブーブー文句を言いながら、背中のプレートを元通りに閉じてやった。
「ありがとうございます♪皆さん心優しい方々で良かった♪あなた方は私の命の恩人です☆」
「俺たちを命の恩人だと思うなら、その命の恩人に、何か恩返しがしたいとは思わないか?」
「もちろん思います☆」
「…………?」
アインの発した言葉の意図を、他の三人はまだ理解出来ていなかった。
「だったら、俺たちをここから脱出させてくれ」
「なるほど!さすが賢いですねアイン様☆」
「単純な脳ミソのアインにしちゃあ上出来なアイデアだ♪」
「…………(-_-)」
「ここから外に出れればいいのですね?お安い御用です♪」
ロボットは胸を張ってそう答えた。
「やっぱりココで生まれたみっちゃんですから、この施設のことは隅々まで網羅してるんですね」
「いいえ、サッパリ知りません。ココで生まれたと言っても、このブースから外に出たのは今が初めてですから♪」
「え?じゃあ、みっちゃん的に何かとっておきの脱出作戦があるってことですか?」
「脱出作戦とゆーか、もっとお手軽な方法ですけど……危ないので少し離れていて下さい」
そう言ってロボットは四人から距離をとると、壁の方を向いて、両手両足を大の字に広げて立ち止まった。
「あいつ…何する気だ…?」
「それは分かんねぇけど、それよりも俺にはククタがあのロボットのことをみっちゃんて呼んでる方が気になる…」
「え?…だって、自分からそう呼んでくださいって言ってたじゃないですか」
「ロボットでもみっちゃんでも、どっちでも構わねぇけど、見ろ、あいつ何かおっ始めるぞ…」
四人が注目する中、三男と書かれたロボットの胸の部分が左右に開くと、中から腕の太さほどの筒がニョキッ!と飛び出て来た。
キュィィィィィィィ~ン…
甲高い、微かな機械音が聞こえたと同時に、その筒の先に細かい光の粒が集まっていった…
※※RENEGADES ひとくちメモ※※
今回もネタがないので、どーでもいい裏話を…(^^;)
古代遺跡で発見された軍事AIロボット「みっちゃん」ですが、これも先のミカ・ティラーナの「ミカ」同様、実在する私の唯一無二の親友から取ったネーミングなのです♪
「三男」と書いて「みつお」
そのまんまです(^∇^)
本人は嫌がると思いますが、その親友を大切に思う気持ちを、何らかの形で残したいと考えた末、物語の中に登場させるとゆー力技を使ったわけです
親友もこれを読んでくれてるわけで、果たしてどんな反応が返ってくるか…
こーゆー遊び心を失くさないよう、これからも書き続けて行こうと思います☆
どうか最後までお付き合い下さい…m(_ _)m 飛鴻
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