進談 13

反逆の点P

ーHー

ありきたりではありますが一つ怪談を提供させていただきます。これは私の友人Hと私の話です。

友人は仮にHとしましょう、彼といつぞやのバイトの話でございます。Hは私の幼馴染です。いつから仲良くしていたかはよく覚えていませんが家も比較的近く彼の両親がいない隙を狙ってよく遊んでいました。というのも彼の父親は医者で厳しく躾けられていました。当時医者というものに年相応の恐怖を抱いていた私は興味を持つこともなく、というより少し避けていたのですが…授業参観のときも彼の父親もとい両親を一度も探したことや見たことがありませんでした。彼は両親の知識の賜物かは分かりませんが一度も季節性の病にかかったことがない人物でした。彼の説明はここまでとしてここからが怪談となります。

私とHはT大学という大学にそれぞれ進学しました。彼は医学部で私は文系学部に進学しました−−進学といっても私は推薦でしたが…それはさておき私の学校では有名なバイトがあるのですがその話です。私の学校ではホルマリンに生き物を漬け保存するというバイトが有名です。有名なのですが姿形を掴むことがみな出来ておらず、出来た生徒も学校を辞めてしまう?らしく私もHに誘われるまでは本当にあるのかと疑っていました。当時としては破格だった1回1万5,000円という給料のバイトでしたが内容はとてもきついものでした。ホルマリンを漬ける部屋に入ると同時に顔の周りを例え難い匂いが襲います。最初は目のあたりがチカチカしていました。ですが友人は両親のお陰かは知りませんがどうも少しなれているようでした。最初私たちに仕事内容を説明してくれた人は自らをHと名乗りました。奇しくも私の友人と同じ名字であり、内科として病院でも働いていると語っていました。この怪異は2回目のバイトの時だったのですが友人とは暫く連絡が取れていませんでした。ですがこのバイトの後日談を一種の都市伝説と思っていた私はただ忙しいのだろうと思っていました。このバイトはただホルマリンの中を長い棒で回すという簡単なものでした。その時の入れ物はいつもより大きく、大きな動物を入れていたのかと思っていました。容器の上から棒をいれるための階段を登っていくと黒色の人間のようなものがいました。すると医師Hの階段を登る音が聞こえました。そして追加の説明…と今回は人のホルマリン漬けをする。きっと君も驚くだろうと言い立ち去りました。私は気味が悪く2回目でしたが今回でこのバイトをやめようと思っていました。台は滑りやすくなっておりいつもより匂いが強く薬品の匂いに慣れていない私はくらくらしてしまいました。するとするんと私の足が滑り容器の中に入ってしまいました。容器の中には目を開いた黒髪の男の子がいました。匂いよりも隣の死体が気になってしまい、助けを求めるためにもがいていました。するとHが近づいてきて容器を閉めました。ガチャっという音が聞こえ何か言っているようでした。うっすらと医師は『君と一緒だとあいつも喜んでくれるよ』と言っているようでした。そして幻覚かは分かりませんが男の子が『これでずっと一緒だね』と付け加えるのでした。

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