第16話 おキヨさんの店で、高橋さんとリンゴと……
「ん、んー……」
リンゴがベッドから上半身を起こした。
被っていた布団が落ちて、乱れたタンクトップの上半身が現れた。
案外大きいのな。
「……? え? どこ? ケ、ケイタッ!?」
「お、おう。起きたか」
「え!? ななななな、なんで!? う“ッ! イタタタ……」
「俺も、頭、痛いよ。思い出したか?」
「う……うん。飲み、直して、寝た」
「そう、俺達は眠っただけで、何もなかったよ」
リンゴは布団を捲り、何かを確認して、ほっとしたあと、なぜかムッとした。
何でだ。
「まぁ、水飲みな。あとインスタントで悪いが、シジミの味噌汁だ」
「う、うん。ありがと。あと……スボン取って」
「お、おう」
ベッドの横に落ちていたリンゴのズボンを拾って渡してあげた。
布団の中でモゾモゾと着替えたリンゴは、布団から出てきた。
若干、頬が赤いように思える。
俺達は、水と味噌汁を飲んで一息ついた。
「ふぅ……ま、なんだ、お互いお疲れ様だったな」
「ホントそれ。前の教育……ケイタが当たりだったのがよくわかったよ」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
「まだケイタは、新人教育残ってるから頑張れ……」
「それ今言う? すごい気持ちが重くなったんだけど」
「あ、はは、イタタッ……私は、しばらく休むけどね」
「俺も、さすがに休むよ。今回はさすがに疲れた……」
「ね。私も」
そう苦笑いするリンゴが何故か可愛く見えた。
「今度、俺がポーターの高橋さんって人から教えてもらった飲み屋行こうか?」
「この状態で、お酒の話する? ま、それがマーセナリーなんだろうけどさ」
「そ、そりゃ、そうか。ま、気が向いたら連絡くれ」
「あいあい。ふぅ……少し落ち着いたから、私も部屋に戻るね」
「おう。付き合ってくれてありがとな」
「いえいえ、こちらこそ。じゃ、またね」
「気をつけて帰れよー」
「うーーーーぃ」
そう言って、リンゴは帰っていった。
俺は2度寝しようと、ベッドに入ると、アルコールの臭いと、なんだか分からないけど、良い匂いがした。
1週間程、ゆっくり過ごして、5階層に行こうかと思い立った。
事前に予約して、行かないといけないし、行くとしたら、戦えるポーターか、僚機とポーターを連れてかの2択だな。
結局、休んでいる間、リンゴからの連絡なかったから、せっかくだから一緒に行ってもらうか。その時、高橋さんにも依頼すれば、飲みにいくのに丁度いいな。
俺は、リンゴと高橋さんに連絡してみた。
2人とも快く依頼を受けてくれた。
3日後、俺達は5階層に行くことを約束し、俺は、諸々の手続きを済ませた。
当日、5階層の探索。
カイトのことを考えれば、めちゃくちゃやりやすかった!
すぐにキャリアが満載となり、ギルドに帰還し、おキヨさんの店に向かった。
「ここ和菓子屋じゃん」
「俺も最初きた時、同じこと言ったよ」
「さぁさぁ、リンゴさん着いてきてください」
俺と高橋さんはいつも通り、どんどん進んでいくと、少しオロオロしながらリンゴも着いてきた。
「ども女将さーん。今日は3人ね」
「あいよ。あら、ケイタもいるならカウンターにきな」
「おキヨさん、どうもです」
「え、あ、初めましてケイタと同じギルドのリンゴです」
「あらまぁ、可愛らしい子連れてきたじゃないか。ま、あたしの若い頃に比べればまだまだだけどね」
「そりゃおキヨさんは、No.1ですからね、あははッうぐぅッ」
脇腹に肘打ちをくらった。
痛む脇腹を押さえながら、俺達はカウンターに座った。
「これはこれは、愛されてますねケイタさん! 女将さん、もやし山2つと串の盛り合わせ3つで」
「あいよ。あたしの分も頼むよ。あといつもの準備しときな」
「へいへーい」
いつみても高橋さんの手際はいいよな。
「あ、おキヨさん、生中も4つお願いします」
「ふ、ケイタ、わかってるじゃないか。あいよ」
なんとなくムッとしているリンゴを横目に、2人が準備出来るのを待った。
しばらくすると、もやし山を2つ持ったおキヨさんが戻ってきて、ビールサーバーで4つの生中を作ってくれた。
そして、すぐに串の盛り合わせを持ちに行ってくれた。
おキヨさんが戻ってきたので、みんなで乾杯した。
「今日も無事に帰還できたことを祝い、乾杯!」
『乾杯!!』
くぅー美味い! もやしも美味いッ!!
リンゴも目を丸くして、美味しいと呟いていた。
4人で楽しく飲んで話していると、高橋さんが串を焼き出して、おキヨさんと高橋さん、俺とリンゴで話をするタイミングになった。
「ね、シズクさんに連絡してないの?」
「え、してないけどなんで?」
「一昨日、一緒に飲んだんだけどさ。私がカイトをケイタと一緒に教育した時、大変だったって話をしたんだけど、その流れで一緒に飲んだって話になってさ。シズクさん、私は誘われてないって小さく呟いてたんだよ」
「えぇ!? いや、さすがにいきなり飲みに行きましょう! なんて俺誘えないんだけど」
「いやいや、ケイタの教育してくれたのシズクさんじゃん」
「そうだけどさ。余計に誘いずらいじゃん」
「そう言われると、そうなんだけどさぁ……」
「えぇ……じゃあ今から声かけてみる?」
「それはさすがに失礼じゃない?」
「でしょ? シズクさんだよ? 忙しいに決まってると思って、俺なかなか誘えないんだけど」
「あぁ……私もそれは分かるかも。一昨日はシズクさんから誘われたから良かったけど、自分から誘うのは私も無理かも」
「わかってんじゃん。でもまたリンゴと飲んだって知られたら……とりあえず連絡だけ入れとこうか」
「そのほうがいいかも」
俺達は苦笑いしながら、シズクさんに連絡してみた。
何かやっているといけないのでメッセージを送ったんだが、すぐ返信がきた。
『すぐ行きます』
と。和菓子屋の飲み屋ってわかりますか?って聞いたら、キヨさんのところですねって返信がきた。
ここ、シズクさんも知ってるんだね。
「来るって」
「返信早っ」
「それは俺も思った。おキヨさん、これからシズクさん来ますので、よろしくです」
「ん? ケイタ、シズクと知り合いなのかい?」
「あ、俺はシズクさんに教育を受けたんですよ。4階層行くときにリンゴとも知り合って」
「あらぁ、ケイタもすみに置けないねぇ! あたしも日本酒もらっちゃおうかね!」
「これはこれは! お2人はシズクさんと縁があったんですねぇ! ここ教えたの自分なんですよ!」
「え! 高橋さん、シズクさんのポーターもやってたんですか?」
「そうですよ! あの時も教育があるからって……あ! それがケイタさんだったのかもしれませんね!」
「そんなことがあったんですね。ホント世界は広いようで狭いもんですね」
「ハハハ! 自分は卒業したての新人さんによく指名されますからね。それでだと思いますけどね!」
俺達が笑いながら、酒を飲んでいると、息を切らしたシズクさんが店に入ってきた。
「ハァ、ハァ……って、な、なんでみんな一緒なんですか!?」
珍しく驚くシズクさんを見て、俺達は笑ってしまった。
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