第3話 菊代と謎の男
いつものように仕事を終えて帰路を歩いていると、一人の若い男が菊代に声をかけてきた。
振り返った菊代のあまりの美しさに男は見とれて言葉を失っていると、「なんでしょうか?」と菊代は男に尋ねた。
男は菊代の可愛らしい鈴のような声に益々驚いた。男は「君名前はなんて言うの?年はいくつだい?」と聞いた。菊代は警戒心を持ち「見ず知らずの方にお教えできません」と答えた。
「あはははは!」男は大きな声で笑い、「ごめんごめん、、、良かったらそこの喫茶でお茶をしないかい?君に聞いて欲しい話があるんだ」と言ってきたが、菊代は「家族が待っておりますので…」とお辞儀をしてその場を立ち去った。
菊代は、見ず知らずの男に声をかけられて喫茶に誘われたことに対して、怖いと思いながらもどこかスリルを感じてドキドキしていた。
「もしまた声を掛けられたら、話くらいは聞いてみようかな…」と考えながら家路を急いだ。
家に帰ると菊代はまず姉に今日の出来事を話した。姉は「怪しい男だね、絶対誘いに乗ってはだめよ」と少しきつい口調で菊代に言った。
それから1週間経つが、一向にあの男は菊代の前に現れなかった。菊代は少し残念な気持ちになった。
初めて男が声を掛けてから1ヶ月が過ぎたころ、菊代の住む町の隣町にある繁華街で大きなカフェーがオープンした。
働いている女給士は美人ばかりで、男性客の足が途絶えないと噂になり、菊代の勤めているお屋敷の旦那様も週に何回も足を運んでいるようだった。
菊代はそんなカフェーで働けたら今よりもお金が稼げて家族も今より楽に出来るんだろうなと思いながらも、小さな町から出たこともない自分には縁のない仕事だと感じていた。
そんな事を思いながら歩いていると、例の男が菊代の前に再び姿を現した。「良かった、ここで待っていればいつかは会えると思っていたんだ。この前はいきなり名前や年齢を聞いてしまって、さぞ驚かしたよね。でもどうしても君に聞いて欲しい話があるんだ。今度こそ名前を教えてくれないかい?」菊代は姉に言われた通り今回も断ろうかと思ったが、好奇心の方が勝ってしまい「菊代です」と答えた。
「菊代ちゃんか…良かったら話を聞いてくれないかい?」菊代はこの男のことが気になりながらこ1ヶ月を過ごしていたので、男の誘いに乗って近くの茶屋で話を聞いてみることにした。
男は30代半ばでとても身なりの良い格好をしていた。どこか気品がある仕草をする人で、菊代の警戒心は徐々に解かれていった。
「菊代ちゃんもコーヒーでいいかな?」菊代は子供の頃親に「コーヒーは大人の飲み物よ。大きくなったら飲ましょう」と言われていたので、コーヒーに対して憧れがった。
人生で初めてコーヒーを口にした菊代は想像より苦い味に驚いた。むせて咳をしていると、男は「ごめん、ごめん!ブラックじゃ飲めないよね。ミルクと砂糖を入れると甘くて美味しく飲めるよ。」と言って、ミルクと砂糖を入れて菊代に手渡した。
それでもまだ足りず、ミルクコーヒーになるほどミルクを足す菊代に、男は愛らしさを感じた。
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