第2話 最愛の母の死と菊代の成長
長屋に移り住んでから半年、父親が所有する土地や家を借金の方に渡すことで返済は終わり、貧乏でも平和な日々を過ごしていた。
しかし、父親は金のないときは祖母の金をくすね相変わらず酒を飲む生活をしていた。仕事も長続きせず転々としてまともな稼ぎは得られないようだった。
机も買えず、子供たちは拾ってきた木箱を机代わりに使用して勉強やお絵描きなどに使っていた。靴にも穴が開いてしまい、冬場になるとむき出しの指は霜焼け状態になってしまっていた。
母親も病院で薬を貰えない事が続き体調はますます悪くなり、以前より苦しそうに寝ているだけの日が多くなった。
菊代は母親を助けたいと思っていたが、まだ8歳、学校に行く事しか出来なかった。そんなある日ついに母親が突然の発作でこの世を去った。
長屋の1部屋は悲しみに包まれ、祖母も姉も3人の弟達も泣きじゃくっていた。菊代は他の子供たちの様に泣きじゃくることはせず、大好きな母親を失って凄いショックを受けた様子だった。この時菊代の心に母親を殺したのは父親と思い、父親を恨む気持ちが生まれた。
葬式が終わり、喪が明け菊代は今まで通り学校に行き、祖母の手伝いや弟たちの面倒を見て過ごした。
父親は妻を失ったショックで前よりも酒を飲む量が増え、仕事も辞めてしまった。祖母が老後の資金として残しておいた金で家賃や生活費を出していたがそれもいつまで持つかわからない状態だった。
しかし、そんな心配をしているうちに、2年の月日が経ち、酒に溺れて生きてきた父親はついに体を悪くして他界。祖母と姉、弟3人の6人暮らしとなった。
父親がこの世を去ってから、今まで父親が使い込んできたお金がない分少しはマシな生活が送れるようになった。
なりよりも変わったのは、誰も父親にびくびくすることなく暮らせるようになり、一家には笑顔が増えたことだ。
更に2年が経ち、12歳になった菊代は尋常小学校を卒業。頭が良く、勉強も好きだったので、高等小学校(現在でいう中学校)へと進学したかったが、金銭的な理由で無理だとわかっていたし、自分のわがままで祖母や姉が無理をして苦しくなるよりも、自分だけが気持ちを押し殺して、黙っていることが最善の選択だと思い、進学したい思いは隠した。
そして、姉の様に働きに出てみんなを助ける方が家の為になると気持ちを切り替えた。
菊代は姉の紹介で金持ちの屋敷の清掃係をするようになった。給料はとても安かったが、菊代は家のために働けている現状に満足していた。少しは家計の助けになっていると思って。
菊代は自分が高等小学校に進学できなかったので、弟達には進学させたかった。
毎日少しでも稼ぎの良い仕事を探していたが、12歳の女の子を対象とした仕事がそもそも少なく、なかなか希望にあった仕事は見つからないまま、菊代は14歳になった。
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