第4話 ライトスタッフ-A
『かのっち、笑って』
――20年前、ディザイアを倒すため妖精郷へ乗り込む前日、皆で写真を撮った。
生花店『さくら』の温室。周りには蘭やバラ、ダリアなどが咲いている。スマートフォンのレンズは、私たち魔法少女四人と、光の妖精たちを映していた。星野なゆたが、細い腕を私の首にまわしてニカッと笑いかけてくる。つられて、私は唇の端を少し持ち上げた。
『ピース、ピース』
なゆたは明るくて、オシャレで、まさにきらきらと輝く光の魔法少女だった。
その自然な笑顔に、私は疑問を持つ。
『あなたは、もう、戻れないかもしれないとは、思わないの?』
おさげのようなローツインの髪を揺らして、なゆたはスマートフォンを妖精たちへ向けていた。独り言のような、ぼそっとした私の質問に、彼女は振り向く。
『”剣が折れたとしても、私は折れた剣を握って、戦い続けるつもりだ”』
『……シャルル・ド・ゴール?』
『だいじょうぶだよ、かのっち。今回はポッペもいる』
なゆたは、顔を上にあげて、スマートフォンのカメラにポッペを収めた。ポッペは妖精の中では飛びぬけて大きい。見かけだけではなく、ポッペは妖精郷で最強の戦士だ。ただ、妖精としては非常に高齢であるため、必要なとき以外は眠るようにしているようだった。
『それにね、行くなら皆で、行かないなら、それも皆でだ。仲間をひとりにはさせない』
『誰の言葉?』
なゆたは私へ向き直り、ウィンクをする。
『あたしの言葉さ』
温室に、虹がかかった。まだ蕾だった花も、一斉に咲きだす。モアイのようなポッペが、薄っすらと目を開けて、微笑みながら、こちらを見ているようだった。
妖精ポッペ。温厚で、優しい、最強の戦士。契約をしている由乃は最弱の魔法少女とまで言われているが、ポッペと契約できたのだから、才能があるはずだ。
私たちは、手を取り合って、温室で誓った。
ずっと一緒に、戦い続けることを。由乃も、累も、なゆたも、光の妖精たちも、誰も離れ離れになることなく、きっと、妖精郷を取り戻すのだと。
温室の中、ポッペの下で誓った――。
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