第3話変わって行く心

 なぜか彼と食事することになってからも、毎日のように女性を連れた彼の姿を見かけたが、月に一度か二度、あの雨の日に会った場所で、彼が一人で立っていることがある。


 通り過ぎる女性たちが、ハッと目を見張って彼を見つめるのも気づかないようすで、面白くもなさそうな表情で通りをながめている。


 私が近づいて行くと、当然のように肩を引き寄せられて、食事に向かう。

その日はたまたま相手がいないので、その代わりなのか、ヒマ潰しに利用されているのか、よくはわからない。


「そんな髪型で、丸っこい顔を余計に丸く見せるだけだ」


 ショートボブだった私の髪は、彼の手によって、ゆるいウェーブのセミロングに変わった。

 彼が言う通り、髪型を変えただけで、かなり大人っぽく見えるようになった。


 黒や紺の地味なスーツをやめて、明るい色のスーツに代えたり、フェミニンなブラウスを着るようになったり、少しの変化でも、だいぶ印象が変わったようだ。


 以前は声をかけられることもなかったが、最近ではたまに、会社の飲み会に誘われるようになった。


 私の彼への気持ちも変化してきた。ただ姿を見かけるだけで良かっはずなのに、退社時にはいつも、あの場所に彼が立っていないか、期待してしまう。


たいていは女性を伴った彼とすれ違うことになるのだが、その時でも、一瞬、相変わらず怒ったような無愛想な視線を、私に移してくれるようになった。


 まれに、薄闇の中、車のライトに照らされて立つ彼の姿を見つけた時だけは、私を待っていてくれたのだ、という自惚うぬぼれに似た感情がわき上がってくる。


 その時だけは、私よりもずっと彼の隣に相応しく思える、美しい女性たちの姿も気にならなくなって、彼の鋭く射るような視線にさらされても、恐ろしいとは思わなくなった。


 恋人と言えるほどの自信はない。私は都合の良い女なのか。彼にとって私は何なのか、良くわからない。


 聞いてみようと思ったこともあったのだが、聞いてしまったらこの微妙な関係が、壊れてしまうようにも思えて、流されるまま、ずるずると続いている。

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