現場復帰―③―

 「凄い!!本当に凄いよ!!ブラッディジェネラル!!!」

少し離れた場所でこちらの戦いを傍観していたネンリョウ=ツイカは大はしゃぎだ。何せ今までは彼1人で立ち向かい、そして尽く敗れていたのだ。

その鬱憤をブラッディジェネラルが晴らしてくれたのだから喜ぶのも無理はない。ただ彼女達の仕事はまだ残っていた。

「ありがとうツイカ。ところで『アオラレン』はどうなってるの?」

自身の戦いに集中し過ぎててあの大型モンスターがどれだけ暴れていたのかが気になってはいたが周囲に人々の姿はほとんどなく、怪物が暴れて建物を壊すような音も聞こえてこない。

「あいつならあそこでスマホいじってるよ。」

「スマホ?何で?」

見ればスマホ型の怪物がまるで米粒くらいの自身のスマホをいじっては顔の部分を真っ赤にしている。覗き込んでみると何やらSNSで盛大に煽られて炎上しているようだ。

そして車ほどある大福のような手でそれらとレスバトルを繰り広げているのだから開いた口がふさがらない。

「そろそろいいんじゃないかな?これだけ『アツイタマシー』が燃えているんだもん。今日はパパに褒めてもらえそう!」

『アツイタマシー』・・・確かに熱くなってはいるようだがそれは魂だろうか?ただ頭に血が上っているだけじゃないか?


「集まれっ!!『アツイタマシー』!!」


しかしブラッディジェネラルの素朴な疑問を他所にツイカがブレスレットをはめた右手を向けて叫ぶと『アオラレン』がか細い悲鳴を上げて元の男性へと戻っていく。

(おおお!こうなるんだ?!)

自分がプリピュアだった時代にはモンスターにされた物や人も自分達の技で元に戻していた為、敵対組織もこういう技術があるんだと素直に感心する。

見れば破壊された建物や車も元通りに戻っていたので驚きつつもそれに勝る安心感が彼女の心を満たした。これなら良心の呵責に苛まれる事はないだろう。

むしろ心配なのは・・・・・




「ねぇツイカ。プリピュアの3人っていつもあんな感じなの?」


秘密結社のアジトに戻ってからブラッディジェネラルは今日の反省会で尋ねてみた。最初はよくわからないといった様子で小首を傾げていたので少し言葉を整理して再び問いただす。

「えっとね。なんていうかその、私の知るプリピュアってもっと真っ直ぐで可愛くて、それでいて優しいっていうか女の子らしいっていうか。」

「・・・うーん。最初からみんなあんな感じだったよ?特にピュアクリムゾンとピュアフレイムはすぐに僕の事馬鹿にするんだ!だから今度はお尻を触って・・・!!」

そう言いかけたツイカは教師としての厳しい表情を浮かべていたブラッディジェネラルに気が付くと思わず口を噤んで言い直す。

「今度こそスカートめくり・・・も駄目みたいだからその・・・負けないように頑張ります・・・。」

更生した意見に満面の笑みで応えるも、そもそもプリピュアのスカートは文字通り鉄壁だ。いくら人体を羽毛のように空へ吹き飛ばしても絶対に見えないだろう。

そう、プリピュアにだけは。






 「くっそー!!!あたし達が負けた・・・のか?!」

信じられないと怒り狂う紅蓮ほむらに火橙あかねはただ怯えて見守るだけだった。こんな彼女に接すれば何をされるかわからない。

「あのおばさん。新しい幹部らしいけど・・・何?プリピュアって相手を痛めつける楽しい役割なんじゃないの?」

しかし彼女が唯一気を許している悪友蒼炎りんかが腕をまくって痣を憎憎しく睨み付けるとほむらの怒りは少しだけ収まったらしい。

「うわ・・・お前も怪我とかするんだな。そういうのっていっつもあたしかあかねの役なのに。」

「冗談じゃないわ!私だって二度と怪我なんかご免よ!!もしまたあいつが出てきたら絶対許さないんだから!」

普段は物静かだと評判のりんかが眉間に縦皺を作るほど怒りを露にするとほむらは自身の溜飲が下ったらしい。いつもの雰囲気と笑顔に戻っていたがどちらにしてもあかねの心境は穏やかではない。


彼女の機嫌が悪ければ被害は必ずやって来るのだから。


「ねぇあかね。これを見て貰える?」

先ほどまで激高していたとは思えない程静かで優しい声に名を呼ばれて思わず飛び跳ねる。りんかは笑みを浮かべているがその裏の不気味な冷たさは隠せていない。

心身が凍り付いたあかねが怯えながらも小さく返事をすると彼女は嬉しそうにスマホの画像を見せてきた。そこには今日戦った相手ブラッディジェネラルの姿がある。ただその角度があまりよろしくない。

「ほむらや私を傷つけたあの女の素性を調べてもらえる?手がかりは赤い下着よ。」

「え?!お前こんなのをいつの間に・・・?」

「・・・あまりにも実力差があったから今後の対策に記録してたのよ。でもあれだけ短かったらちょっと動いただけで丸見えよ?」

短いスカートから見える真っ赤な下着に目が行って全身像がよくわからないがりんかがこの後何をするかが想像出来てしまいあかねは思わず身震いする。


「貴方にも紹介したパパがいるでしょ?そっちの方向からも詳しく調べてみてね?」

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