現場復帰―②―
ばきっ!!!!
大きな音と衝撃を腕に感じたものの赤いプリピュアの蹴りを見事に受けるブラッディジェネラル。
「なっ?!何だてめぇはっ?!」
これだ。この感覚を待っていた。その足を全力で跳ねのけた後3人のプリピュアが攻撃の手を止めてこちらに注意を向ける。多少のトレーニングはしてきたものの自身も色々と久しぶりなのだ。
「・・・わたっ、私は秘密結社『ダイエンジョウ』の幹部!ブラッディジェネラルッ!!」
最初の出だしを噛んでしまい更に声が上ずってしまったもののとにかく名乗りを上げる事が出来た。ここからは敵対勢力としてしっかり戦っていかねばならないだろう。しかし次の瞬間その覚悟がいきなり揺さぶられる返答が返ってきた。
「はぁ?・・・っておばさん。ちょっと年齢の割には格好が攻めすぎじゃねぇか?」
「おばっ?!?!」
「クリムゾン。言ってあげないで。きっと生活に困窮しているんだわ。」
「か、かわいそー・・・」
自身ではそれなりに気に入っていた格好を貶された挙句おばさん呼ばわり。更に勝手に同情までされてしまい負の感情が濁流となって渦を巻く。しかし1つだけ理解はした。
「・・・誰がおばさんよっ?!私まだ28なんだけどっ?!」
プリピュアが若すぎるだけであって世間的にはまだまだ若い部類のはずだ。ブラッディジェネラルは敵対しているのも忘れて一番大事であろう部分に反論すると3人は顔を見合わせる。
「あたし達の歳と倍違うじゃねぇか。おばさん。」
「痛々しいわね・・・きっと三十路を過ぎても自分の事を女子とか言うんだわ。私達も気を付けましょう。」
「うんうん!そうだね!」
黄色い子はただ相槌を打っているだけだがとにかく赤と青の発言が耳から脳幹にまで突き刺さる。おかしい。プリピュアというのはもっと性格も考慮されて選ばれるとばかり思っていたが。
拳を交える前から打ちのめされたブラッディジェネラルは後輩のプリピュアを前に魂をさ迷わせていると。
「くらえっ!!必殺!!ハリケーンスカートめくりぃっ!!」
突如真下から突風が吹き上ると自身も含めて4人が勢いよく上空へと放り出された。体の自由を失いつつ地上を確認してみるとツイカが大きな羽箒みたいなものを手にしている。
「あんのエロガキッ!!まだ名前を変えてなかったのかっ!!」
「おかしいわね・・・前にスカートをめくるくらいなら直接お尻に触ったほうが相手にダメージを与えられるわよって教えてあげたのに。」
「でも子供っぽくてかわいー攻撃ー!私は好きだなー!」
・・・・・そうか。いきなりお尻を触って来たのはこの青い奴のせいか。もはや自分の記憶とはかけ離れた3人と共に中空へ飛ばされながらも彼女の中で現実に引き戻された憎悪が芽生えるとおもむろにジェネラルウィップを顕現させる。
「・・・貴方達にも再教育が必要ね?」
未だに相手の名前を聞いていなかったがもはやどうでもいい。まずは年上の人間を敬う心を教えるべく翔子はその鞭を思いっきり振り回し始めた。
びしびしびしびしびしびびびびしっ!!!!
まるで竜巻のような鞭捌きを披露すると彼女達は技を出す間もなくそれを受けて地面へ叩きつけられていく。
想像以上の力が備わっている事に後から気が付くも今は別の感情がブラッディジェネラルを支配しておりそこに触れる事は無い。
「す、すげー!!ブラッディジェネラルすごいよっ!!」
着地と同時にツイカが大はしゃぎで喜んでくれたがこちらの心は荒天状態だった。折角・・・折角プリピュアのいる世界へ舞い戻って来たというのに目を逸らしていた現実を突きつけられて感動の再会は台無しだ。
「ってて・・・あのおばさん、結構やるじゃねぇか・・・」
クリムゾンと呼ばれていた赤い娘がリーダー格なのだろう。いち早く体を起こしてきたのでこちらも遠慮なく追撃を放とうと地面を蹴った。
「プリピュア!!ファイアレターダントッ!!」
突如2人の間に青い炎の壁が立ちはだかる。どうやら青のプリピュアは防御技に優れているらしい。
「プリピュア!!バーニングナーックル!!!」
そこに真横から黄色いプリピュアが大きな燃える拳を放ってきた。だが相対して初めてわかった事がある。技を放つ前にその名前を叫ぶとこちら側としては非常に対処しやすい事を。
ブラッディジェネラルも身体能力が向上している為それを難なく躱すとすぐにブラッディウィップでその腕を締め上げる。
「うわっと?!」
バランスを崩しつつもその場で踏ん張れた所をみると黄色い彼女はかなりのパワーを備えているようだ。だがそこは戦い慣れしたブラッディジェネラル。ウィップを多少左右に振ってその体幹を揺さぶった後大きく振り上げると小柄なプリピュアは空に舞い上がる。
そしてそのまま青と赤がいる方向へ叩きつけるとファイアレターダントは消滅し、3人が重なり合うようにビルの壁へと叩きつけられた。
プリピュアを圧倒している場面。普段の真宝使翔子なら彼女らに花を持たせようと多少の手心を加えていただろうが今はとてもそんな気分ではない。そもそも敵対勢力の幹部であり現在就業中なのだ。ならば一社会人としてここはしっかりと働き通さねばと真面目な彼女は考えた。結果・・・
「・・・まず貴方達に伝えたい事。それは自己紹介よ。」
かなりのダメージを追いながらもブラッディジェネラルがいきなり妙な事を言い始めたものだからプリピュアの3人は痺れが走る体をゆっくりと起こしながら顔を見合わせる。
「今日は私の就業初日だった。だから私もちゃんと名乗ったの。なのに貴方達ときたらやれおばさんだの年齢がどうこうだの・・・プリピュアなら礼儀作法くらい身につけたらどうなの?」
教師となって5年。そして元々真っ直ぐな性格の為あまりにもふざけた彼女達に苦言も含めて説教を始めると3人はばつの悪そうな表情で各々が顔を背けた。
「いい?いくら貴方達に大切な目的があったとしてもまずは人として最低限の立ち居振る舞いを心掛けなさい。でないと・・・その、元プリピュアメンバー達ががっかりするでしょ?」
「・・・うっせーババァ!!あたし達がどんな行動をしてもお前には関係ねーだろ!!!」
「・・・そうね。貴女は私達の敵、それが全てなの。どの立場から説教しているのか知らないけど本当に痛々しいわね?」
「・・・・・」
いつの間にか説教をしていたのか。自覚がなかった為彼女らの反応を見て少し冷静さを取り戻すもやはり面と向かってババァは無いんじゃないかな?
「・・・よーっくわかりました。では敵らしく二度と減らず口が叩けないようにしてあげますね。」
完全に昔の幻想を脳裏の箪笥に仕舞ったブラッディジェネラルは満面の笑みを浮かべるとその後3人を相手に圧倒して敗走させるまで戦い尽くしたのだった。
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