第31話 凱旋

「はぁ……はぁ……」

猛攻のツケを払わされるかのようにへたり込む。全身が鉛のように重い。めまいがする。方向感覚があやふやで暫く立てそうにない。だが……


「俺達の、勝ちだ!!」

俺が高らかに勝利を宣言すると、すぐに勝鬨かちどきが上がった。目の前のドラゴンはピクリとも動かない。トドメを指す余裕は無いが、恐らく倒せたと見ていいだろう。


「やりましたわね!銀花!」


「君のおかげだ」


「皆さん、本当にありがとうございました!」


「やるじゃねぇか!お前のお陰で助かったぜ!」


「ありがとう、これで帰れるのね」


仲間たちと健闘を称え合う。だが、いつまでも勝利を喜んでいるわけにもいかない。ここはトラップ部屋だ。また何かの拍子に敵が召喚されるかもしれない。体力も少し回復したので、転移のスクロールを使ってギルドに戻ろう。


俺が転移のスクロールを読み、辺りが白い光に包まれ始めたときだった。倒したはずのドラゴンが目を覚ましたのだ。起きたばかりだというのに、こちらを見るやいなやドラゴンは攻撃態勢をとった。


転移開始までは恐らくあと5秒ほどだろう。まずい、今ヤツに突撃してこられたらギリギリ転移が間に合わない。瞬時に思考を巡らせた結果、1つの結論にたどり着いた。スクロールを持ったまま天井に向かい、全速力で飛ぶ。


「エコー!お前は転移を山彦してくれ!目的地はギルドだ!」


「え、わ、分かりました!」

説明している時間はない。キョトンとしているエコーを差し置き、天井に着いた俺は冷気を放出し始めた。そうして天井に逆さにした円錐えんすい状の氷を取り付ける。狙い通りドラゴンは俺を追いかけてきているようだ。そりゃそうだろう。お前をこんなになるまで痛めつけたのは俺だからな!


ドラゴンがもう近くまで迫ったときだった。転移の魔法の発動準備が整ったようだ。


「今度こそ最後だ!『氷瀑ひょうばく!』」


俺は転移の魔法を使い、円錐の上にある岩盤を円筒状にくり抜いた。すると、ボーリング調査試料のような丸い柱が、先端についた氷の突起とともに落下し、ドラゴンを頭から尻尾にかけて真っ直ぐ貫いた。


「グオオオオオオン!!!!」

ドラゴンは堪らず悲鳴をあげた。苦手な氷がついた、あまりにも質量の大きい槍で貫かれたのだ。流石に無事ではすまないだろう。


「『山彦【転移】』!」

悠長にしている時間はない。すぐに仲間たちの元へと戻る。合流してしばらくすると白い光に包まれた。眩い光が止み、目を開けると王都のギルドに居た。

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