第22話 買い出し
俺達は登録も済み用事が片付いたギルドを後にし自宅の蔵に向かった。
その途中で商店街を通るので、そこで食料品や明日から依頼をこなすのに必要な用品を買いそろえることにした。
「あそこでお肉を、あのお店でお野菜を……」
メモ帳にペンを走らせながらヘルベラが考え込んでいる。大企業の令嬢だったとは思えないほど家庭的だ。浮世離れした口調や品のある仕草とのギャップもまた彼女の魅力なのかもしれない。
食料品や日用品を買いそろえながらお店を回っていると薬草を売っているのを見つけた。
「あの薬草ってどれくらい効果がある物なんだ?」
興味を持ったのでヘルベラに聞いてみる。ひょっとしたら魔法があるようなファンタジーの世界なので傷がたちどころにふさがるような代物かもしれない。
「傷の治りが早くなりますわ。深い傷でも数日でおおよそ塞がりますわよ。」
確かにすごいが期待していたほどのものではなかった。
「傷が一瞬で塞がるとか、そんな優れものではないんだな。」
「薬草に期待し過ぎではありませんこと?止血作用や鎮痛作用もありますし、傭兵ならみんな持ち歩くくらいには有用ですのよ?」
確かに普通の店で売っているような安価な薬草には過剰な期待だった。そう考えていると一つ疑問が湧き上がってきた。
「この薬草って鎮痛作用があって尚且つ誰でも安価で手に入れられるようなものなんだよな?依存性があって麻薬的な使われ方をしたりはしないのか?」
鎮痛作用がある植物と聞いてアヘンのようなものを想像したため聞いてみた。濃縮したり特定の成分を抽出したりして麻薬として使えたりしないのだろうか。
「痛み止めにも中枢性と末梢性のものがありますの。麻薬性のものは中枢性ですがこの薬草は末梢性のものですわ。」
思った以上に詳しい回答が返ってきた。ヘルベラは医学を専門としていたわけではないはずだが、やはり上流階級の出自であったからか教養が垣間見える。
「アスピリンみたいなものか。出血が止まりにくくなるみたいな副作用もないのか?」
末梢性の鎮痛成分と聞いて昔読んだ痛み止めの説明書に書いてあったようなことを思い出す。
「多分無いんじゃないかな。そんな副作用がある傷薬が広く使われているとは考えにくいしね。」
ごもっともな意見だ。
「よし、それなら幾らか買っておくか。あって困る物でもなさそうだしな。」
ルーナエのウジャトの目は強力であるが万能ではない。ルーナエが消耗している場合や気絶している場合、一緒に行動しない場合は薬草が必要になるだろう。
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