第20話 ギルドに登録

「ギルドに着きましたわね。」

クレープを食べた広場から少し歩くとギルドについた。無言の気まずい時間が思ったより短くて済みそうだ。


ギルドの扉を開け中に入る。中にはあちこちで傭兵たちが3,4人で屯っている姿が見受けられる。仕事が書かれた掲示板を見ているものもいれば単に談笑しているだけのものもいるようだ。人種は獣人と思わしき人物がほとんどで妖精らしき姿は見当たらない。




「とりあえずは窓口に行って傭兵として登録すればいいのかな?」




「ええ、そうですわ。まずはブロンズランクの傭兵として登録されますわよ。」




「ランクは何段階あるんだ?」




「下からブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ダイヤモンド、アダマンタイトの6段階ですわ。実績に応じて段階が上がっていきますわよ。」


アダマンタイト……。ダイヤモンドより硬い金属だ。こういった名詞を聞くとファンタジーの世界に来た気がしてくる。




「ヘルベラはどのランク帯なんだ?」




「もちろん駆け出しなのでブロンズですわ。これからお二人と一緒にシルバーを目指していきますわよ。」




「ああ、楽しみだね。」




「あ、ヘルベラさーん!ちょっと来てもらえますかー?」


窓口から一人の女性がヘルベラを呼んでいる。




「今行きますわー!では行きましょうか。」


ヘルベラは返事をすると窓口の方に向かっていった。俺達もヘルベラについて窓口に向かう。




「ヘルベラさん、おめでとうございます!!昨夜のご活躍が決め手となってめでたくシルバーに昇格しました!!……あれ、浮かない顔してどうしたんです?嬉しくないんですか?」




「ええ、今しがた後ろの2人と3人でシルバーを目指す意気込みを語っていたところですわ……。」




「……ははっ、おめでとうヘルベラ。」


俺は軽く手を叩きながら昇格を祝う。




「なんですの!?そのニヒルな笑みは!?」




「冗談だよ、頼もしい限りだ。」




「頼りにしているよ、ヘルベラ。」




「それはそれで……なんか照れますわね……。」


素直に気持ちを伝えられたヘルベラはちょっと恥ずかしそうにみえる。




「後ろの方はお仲間さんですか?」


ギルドの受付嬢が尋ねる。




「ええ、今日は2人の登録に来たのですわ。」




「分かりました、では名前をお教えいただけますか?」




「俺は銀花です。」




「ルーナエです。」




「銀花さんにルーナエさんですね、少々お待ちください。ヘルベラさんの新しいプレートと合わせてお持ちしますわ。」


そう言って受付嬢は奥に消えるとインクの入った器、紙、それと金属製の小さなプレートを持って戻ってきた。




「それではまず銀花さんとルーナエさんにはインクに血液を混ぜてこの紙に名前を書いて頂きます。」




言われた通りナイフで軽く指先を切り滴る血をインクに混ぜ、そのインクでサインをする。矢で撃たれたことに比べれば大したことはないが地味に痛い。それに指先の血は止まりにくいし止血が面倒だ。




「ありがとうございます。では次にこのプレートを血の付いた指で触ってください。ご存じとは思いますが今度はヘルベラさんもお願いします。」


青銅のプレートに先ほど切った指で触れる。すると、金属のプレートにもかかわらずまるで珪藻土に触れたときのように血が吸い込まれていった。




「なにこれ怖。」


目の前で起きた気味の悪い現象に驚愕する。




「ですわよね。ワタクシも何度見ても不気味だと思いますわ。」




「これで登録は済んだのかい?」


青い顔をする俺たちをよそにルーナエは質問をする。相変わらず物怖じしない性格だ。仲間としてはその胆力が頼もしい限りだが。




「はい、無事登録が済みましたわ。これでプレートと個人を紐づけることができました。」




「プレートの種類ごとに受けられる依頼が決まっているのかい?」




「その通りです。依頼を受ける際にプレートの提示をお願いしております。ですので腕に着けたり首からかけたりされる方が多いですね。どのように保管されてもよろしいのですが、紛失にはお気を付けください。」




「もし紛失した場合はどうなるんだ?」




「血液からその傭兵の方のデータを参照して再発行することができますわ。ただし再発行には料金が発生いたします。ブロンズやシルバーならまだすぐに再発行できますが、ダイヤモンドやアダマンタイトともなれば多大なお時間もいただくことになります。」


この口ぶりだとプレートには名前通りの金属が使われているようだ。この世界には実在するのか……アダマンタイト。




「無くさないようちゃんと気を付けないといけませんわね。」




「そうだな、とりあえず腕に着けとくか。」




「私もそうしよう。」




「お揃いですわね。」


3人の腕に輝くプレートを見比べる。ヘルベラのは色が違うが、わざわざそれを口に出すのは品性に欠けるというものだ。

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