第12話 妙に先進的な家
「そういやなんでこの家は随分先進的なんだ?」
収納からあれこれ服を見比べながら着替えを選んでいるヘルベラに素朴な疑問を投げかける。
「なんで、というのが技術的なことに関してでしたら魔法学の発展によるものですわ。この照明や今ルーナエが入っているお風呂、あとそこにある冷蔵庫なんかは
キッチンの方を見ると扉が二つ付いた白い縦長の箱が目に入った。本当に冷蔵庫まであるのかと驚かされる。
「ほかの家もこんな感じの内観なのか?」
もしこれらの家具が一般家庭に普及しているのならこの世界の生活水準は相当高いことになる。特に冷蔵庫なんて戦後の日本で三種の神器と称えられた代物だ。
「いえ、他の家の内観とは異なりますわ。銀花がいた世界がもしワタクシのいた世界と近いようでしたら、中世ヨーロッパの内観に近いと言えば分かるでしょうか。魔道具のおかげで生活水準はそれよりだいぶ高いですが。夜通し点けられる照明は普通業務用ですしお風呂の湯沸し器も通常の家庭にはありませんわね。冷蔵庫がある家も少ないですわ。」
着替えを持ったヘルベラが脱衣所に向かいながら答える。家が広いわけではないので聞こえるが音が壁に
「なるほどな。じゃあなんでここには現代的な品々が揃っているんだ?」
思っていたほど生活水準が高いわけではないらしい。そうなるとこの家は特別であるという事になる。
「ここは元々それなりに稼ぎのある妖精の傭兵が建てた家らしく元の世界での生活環境を再現しようとした結果だそうですわよ。」
ここは妖精の家だったのか、などと考えていると風呂を上がって
「お待たせ、お風呂空いたよ。……どうしたんだい?私の方をじっと見て……。」
「いや、その……変わったTシャツだと思って……。」
言葉は慎重に選ばなければならない。
「どこかおかしいですか?そのTシャツ。ルーナエもそう思います?」
「いや、そんなことはないと思うけど。変かな?」
ヘルベラもルーナエも普通のTシャツだと思っているらしい。
「
こうも皆が何ら疑問を持たない様子を見ると自分のセンスの方がずれているのだろうか、と疑問に思い始めた。それとも生まれ育った世界の違いが影響しているのだろうか。
「いや、俺の気のせいだったみたいだ、風呂入ってくるわ。」
何となく気まずくなってきたので話を切り上げて風呂に向かう。着替えを見ると自分の分の変なTシャツが用意されていた。
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