第11話 やはり異世界だった!

夜の街並みを眺めながらヘルベラの後ろをついていく。しばらく歩くと大通りに行きついた。大通りは時間帯のせいか閉まっている店も多いが明かりがついている酒場からは活気のある声が聞こえる。店の看板を見ていると娯楽施設らしきものもあった。窓越しに笑顔で遊びに興じる人が見える。人通りも意外に多く楽器を持っている人は流しのミュージシャンだろうか。歩いている人のほとんどは獣人である。


大通りを抜けると住宅街に差し掛かった。大通りとは打って変わって辺りは寝静まっており人通りも少ない。いわゆる西洋のファンタジーに出てくる中世ヨーロッパの街並みに見えるが先ほどの大通りのことも考えると生活水準はそれよりかなり高そうに思える。王都の街並みは王様のお膝元に相応しく発展した都市という印象を受けた。




「着きましたわよ。」


住宅街を結構歩いたところでヘルベラが足を止めた。どうやらここがヘルベラの家らしい。外観は他の住宅とあまり変わらず街並みに溶けこんでいる。小さく古い平屋といった感じだが一人で暮らすには十分な広さだ。ヘルベラは玄関のカギを開けると靴を脱ぎスリッパに履き替えて部屋の明かりをつける。電灯ではないようだが見覚えのある形をした照明器具だ。原理は先ほど言っていた魔法か何かだろうか。




「どうぞ上がってくださいまし。スリッパはそこにある物からどれでもお好きなのをどうぞ。」


ヘルベラに促され、俺とルーナエもお邪魔しますと一声かけてから靴を脱ぎ上がり込んだ。中は畳が敷かれた6畳ほどの広さの和室と洋室、キッチン、風呂、トイレという日本のアパートを思いださせる仕様になっていた。全体的に古めかしいが掃除が行き届いている。




「こんな内装は初めて見たよ。」


懐かしさを感じていた俺とは反対にルーナエは馴染みがないものを目にして驚いているようだった。




「銀花は驚かないのですね?」


俺の反応が思っていたものと違ったのかヘルベラが首を傾げる。




「いや、驚いてるぞ。すげぇ見覚えあったからな。」


実際のところ自分が住んでいた家もこんな感じだった気がする。




「ということはワタクシのいた世界と似たような世界から来たのかもしれませんね。」




「やっぱりここは異世界なのか?」


異世界説は馬車の中でルーナエが推論を立てていた中にあった可能性の一つだ。




「そのようです。私が調べた限り妖精は異世界からの転生者ですわ。あなた方もご存じだと思いますが、自然を体現している存在でありその自然に関連する力を使うことができます。私が知っているのはこれくらいですわね。」




「概ね俺達が考えていたのと同じだな。でもこうやって話すことで確証が得られたのは大きい。」




「ええ、私としてもですわ。他にもいろいろと話したいことはありますがその前に……」


ヘルベラの発言を遮って風呂場の方からお風呂が沸きました、という声が割り込んできた。いつの間に沸かしていたのだろうか。……というか本当にここは異世界か?




「お風呂が沸いたので先に入ってきてくださいませ。」




「家の主人の君からじゃなくていいのかい?」




「私は着替えを準備しますので最後で構いませんわ。ルーナエからどうぞ。」




「それじゃあお言葉に甘えてお先に失礼するね。」


そう言ってルーナエは風呂場に向かっていった。特に疑問なく風呂場へ向かっていったという事はルーナエも前世は入浴の習慣がある種族だったのだろうか。

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