世界観編
第10話 衝撃の事実
「王都に着いたぞ、いったん降りてくれ。」
傭兵が馬車のドアを開けて言った。
俺とルーナエも獣人たちに続いて馬車を降りる。広場には拉致されていた獣人たちの家族が集まっており再会を喜び合っていた。自分たちにはそういった相手もいないので救出してくれた傭兵にお礼を言って回っていると、ヘルベラの姿を見つけたので声をかける。
「ありがとうヘルベラ、君たちのおかげで助かった。」
「私からもありがとうヘルベラ。」
俺とルーナエはヘルベラに感謝を伝える。俺たちが無傷で街にたどり着けたのは間違いなく彼女のおかげだろう。
「いえいえ、ワタクシは別に大したことはしていませんわ。それよりこの後どうするつもりですの?」
ヘルベラが問いかける。妖精が襲われない街に来ることはできたものの、俺もルーナエも身寄りも家も金もない。
「とりあえず野宿か……。」
ないない尽くしの人間が取れる選択はそれくらいだろう。もしこの国の福祉の水準が高いのであれば何らかの保護を受けられるかもしれないが、そうだとしても今は夜中だ。とりあえずは夜明けを待つ必要があるだろう。
「私達ができるのはそれくらいだね。」
ルーナエも同じ結論に達したらしい。
「でしたらとりあえず今日のところは私の家に泊まりに来ませんか?」
屈託のない笑顔でヘルベラが提案する。
「いいのか?今はこんな見た目をしているが元々俺は男だったぞ?」
ありがたい申し出ではあるが流石に気を使うべきだろう。
「お気遣いいただいているようですがワタクシの今の体は男性ですのよ?」
なんだって!?喋り方と声、所作、それと見た目からはどう考えったって女性としか思えないぞ!?驚く俺を置いてヘルベラは話を続ける。
「というかやはり転生者ですのね。スクロールの存在を知らないことや妖精であることから予想してはおりましたが。」
どうやらヘルベラは妖精について俺たちより深い知識があるらしい。今後の為にも少し図々しいかもしれないが今夜はヘルベラの家に泊めてもらって情報を得たいところだ。
「ヘルベラ、君もそうなんだね。私も君と情報が共有したい。今晩お世話になってもいいかい?」
ルーナエとも見解が一致したようだ。
「ええ、こちらとしても嬉しい限りですわ。では家に帰りましょう。家は街のはずれにあるのでちょっと歩きますわよ。」
ヘルベラはそう言うとまだ人が残る広場を後にして歩き始めた。
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