第8話 優美なる花の妖精
勢いよくドアを開け入ってきた人物がすっころぶ。素っ頓狂な叫び声に一瞬警戒を解きそうになるが思い直し気を引き締める。
「イタタタ…って冷たいっ!しかもナニコレ動けませんわ!?」
俺とルーナエは槍と弓を構えたまま床に張り付けになっている人物に近づく。
「待ってくださいませ、ワタクシは敵ではありませんわよ?王都の依頼でギルドからあなた方の救出に参った傭兵ですわ。」
そう釈明する人物を二人で注意深く観察する。見た目は赤い髪に下がパンツの赤いセーラー服を着た少女である。床に貼り付けられながらも依然として気品のある顔立ちは崩れていない。手には槍を持っている。そして何より気になったのは、
「「背中に羽…」 」
俺とルーナエはそう呟く。
「ええ、妖精ですわ。」
仲間に裏切られて自分が売り飛ばされるリスクを考えれば妖精が奴隷商をやるとは考えにくい。少なくとも自分たちが捕まっていた奴隷商よりは信用できそうだ。とりあえず彼女を張り付けにしている氷を解除した。
「ご理解いただけたようで何よりです。改めまして、ワタクシは王都のギルドに所属する傭兵のヘルベラと申しますわ。」
王都……奴隷商が言っていた帝都とは別の都市だろうか。
「私はルーナエ、よろしくね。」
「俺は銀花だ、よろしくな。」
「はいお二人ともよろしくお願いしますわ。早速ですけれどここを離脱して我々の馬車まで来ていただきますわ。ワタクシのお仲間の方々が戦っている間に急ぎますわよ。」
俺たちは彼女に同行することにした。依然として
傭兵たちと奴隷商たちの戦闘を横目にヘルベラの後ろをついていく。ヘルベラが俺たちに背中を向けているのを見ると本当に敵意はないようだ。傭兵たちも獣人のようであるし単純に仲間の解放といったところだろうか。そんなことを考えているうちに目標の馬車が見えてきた。
「あの馬車ですわよ。やはり3人とも妖精だと飛べるので早いですわね!」
先程は自分の飛行能力に気づいてすぐ撃墜されたため分からなかったが、結構速く飛べるようだ。障害物の無い地形では少なくとも人間が全力疾走するより速い。馬車まであっという間に着いた。ヘルベラが指さす先を見ると、すでに数人の獣人が集められていた。
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