第7話 作戦決行
先程とは打って変わって俺とルーナエは小声で話す。作戦会議を行っていることを覚られないようにするためである。
「じゃあ具体的な作戦をかんがえるか。」
よくよく考えればまだ傷が治っただけで無策のままだ。いつ実行のチャンスが訪れてもいいように作戦を迅速に練る必要がある。
「そうだな、見回りに来た奴隷商を君が凍らせた床で滑らせる。そのまま氷を伸ばして倒れた奴隷商を床に張り付ける。そのまま馬車から出て近くの奴隷商を氷の槍と光の矢で薙ぎ払う。最後に私の姿を消す能力を使って出来るだけ遠くまで飛んで逃げる。こんな感じでどうだろう?」
ルーナエの発案した作戦はついさっき判明したばかりの俺の能力が組み込まれている。俺の能力を知らなかったはずなのにそれを踏まえた作戦の仮組が随分素早い。それとも事前に俺の妖精としての能力を系統別に仮定して作戦を何パターンも構想していたのかもしれない。どちらにせよ頼もしい限りだ。
「それでいくか。ちなみに時間制限の他に何か能力に制限はあるか?」
「インターバルを要するよ。能力を使った時間の倍だね。30秒使ったなら1分あいだを開ける必要がある。あと繰り返し使用すると疲弊するよ。こんな感じで制限はあるけど奴らはこの能力について知らないから周りにいる奴隷商たちを振り切って能力発動までもちこめれば十分勝機はある。」
「逃げ切れたとして妖精に対して友好的な集落を見つけなければサバイバルをしなくちゃならないが慰み者にならないのなら十分だ。乗ったぜその作戦!」
実戦に関しては素人だから奴隷商を手加減して倒すなんてことはできないだろう。可能な限り避けたいが場合によっては相手を殺してしまうかもしれない。勿論、向こうに殺すつもりはなくとも戦闘中に命を落とす危険もあるだろう。そう思うと身体が強張る。だが、ここでやらねば始まったばかりの第二の人生も早々におじゃんだ。それに共に戦うルーナエの命もかかっている。覚悟を決めなければならない。
「ふふふ、それじゃあ馬車が止まったところで準備開始だ。」
ルーナエがそう言い終わる前に馬車が急停止した。慣性に従って体が前方に引っ張られる。
「おおっと、いきなりか?」
床に手をつき体のバランスを整え身構える。
「待った、銀花。様子がおかしくないか?」
確かに言われてみればそうだ。休憩ならば急停止したりはしないだろう。となると獣人が脱走した時のように車両にトラブルが起こったのだろうか。そう考えていると辺りで剣戟の音が聞こえ始めた。
「戦闘が始まったのか?一体何でだ?」
予想外の展開に困惑の表情を浮かべてしまう。
「分からない…奴隷を強奪して売り捌こうとする別の一団かもしれない。とりあえずさっきの作戦通りに構えておこう。」
ルーナエの言う通りに馬車の入り口付近の床を凍らせ氷の槍を構える。ルーナエも光の矢をつがえている。
「ぐあぁッ!!?」
馬車の周りにいた奴隷商たちが次々に断末魔の叫びをあげながら倒れていく音がする。
トントンと馬車の階段を上がり気配が近づく。ドアのカギが開けられガチャリとドアノブが回る音がした。
「助けに参りましたわよっ…ぉおおあ!?」
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