かくて新たな使いを得る

 数日経って、陸が俺の元へとやってきた。

 まだ元服をしておらず、結っていない長いその髪は、やはり空を思い出させる。


「なぁ、歳はいくつだ?」

「十でございます」


 俺の質問に、陸は淡々と答える。

 しかし、俺の見立てでは陸は十二歳辺りだと思っていたのだが、違ったらしい。


「では、姉について教えてくれないか?」

「姉でございますか」

「あぁ、確か名前は空と言ったか」

「はい、確か十六だったかと思います」

「十六か」


 なるほど、俺が今十二歳だから四つ上、ということか……。


「好きなものは?」

「すみません、知らないです」

「いや、いい」

「……」

「……」


 しかし、陸は俺に聞かれないと気まずいくらいに無口だ。

 気まずすぎて空に関する相談もしにくい……どうしたものか。


「その……だな」

「はい、なんでしょうか」

「空と文が交わしたくてな」


 まだ十だ。転生している俺はまだしも、元服もしていない少年なら、男女の仲まではそうそうわからないだろう。

 そう踏んで、俺は直球で勝負に出ることにした。


「文……はっ、源様は、姉上を!?」

「ちょ、声が大きいっ!?」

「んん~!!」


 慌てて陸の口を手で塞いでやる。

 くそ見誤った。俺が思っている以上に陸は賢い。


「いいか、他言無用だ。陸はただ言われたとおりにしろ。空に手紙を渡す。空から返事の手紙をもらい、俺の元へ届ける。いいか?」

「えっと……はい、わかりました」


 俺が空を狙っていることはわかったらしいが、逆に言えばそれ以上はわからなかったらしく、深く考えないうちに陸はうなずいた。


「それじゃ早速。これを」


 言って、俺がしたためた手紙を渡してやる。


「わかりました、直ちに」


 陸はそれを受け取ると、すぐに準備をして家を出ていった。

 ここから空のいるところまでそう遠くはない、今日の夜にはあちらからの返事が来るだろう。

 それまで気長に待とうと、俺は俺で葵の元へと向かうのだった。

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