方違へ
「んっ、んぅ……はぁ……源様ぁ……」
葵に連れられ、部屋へと入った俺たちは早速お楽しみ中だった。
「上書きをする」という宣言通り、葵はいつもより情熱的に俺のことを求める。
求められた俺は、それに応えるように、同じく情熱的に葵を求めてやる。
「はぁ、はぁ、はぁ……、すき……だいすき……」
盛り上がっているからか、普段はなかなか口にしないことを言う。
俺は意外と単純らしく、そのセリフに我慢がならなかった。
「あっ……みなもとさまっ、はげしっ……〜〜〜〜!」
お互いに果てる。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「はぁ〜〜……」
ここまで激しく行為に及んだのはいつぶりだろうか。
前世でもなかなかだったような気がする。
「み、みなもとさま……いつもより激しくなかったですか……?」
「なんか……盛り上がったな……」
「……いつもこんな感じでも……よ、よろしいのですよ」
葵が照れたように布団の中から顔をちょこん、と出して言う。
「お、おう……そうか……」
正直、このくらいを頻繁にとなると、身体が保たない。
「まぁ、無理はしないでください……」
「もちろん……って、寝たのか」
俺の腕にピッタリと体を合わせたまま、葵はすぅ、すぅ、と一定のリズムで寝息を立てる。
その姿がとても愛おしく思えて、そっと頭を撫でてやる。
「んぅ……?」
一瞬だけ俺の手を警戒したが、すぐに俺の手だと理解したのか、また安心し切った顔で眠りについた。
まだ日が出ているが、昼寝にはちょうどいい時間だろう。
しばらく頭を撫でていると、こんこん、と扉を叩かれた。
「源様、本日は方違へでして……どちらへ向かいましょう」
侍従が扉越しにそう尋ねてくる。
もしかしたら、行為が終わるまで待っていてくれたのかもしれないと思うと、恥ずかしさが込み上げた。
……それはさておき。確か、六条が言うには紀伊守邸が涼しくていいんだったか。
「紀伊守へ」
「分かりました、今すぐにその旨を伝えて参ります」
言うと、侍従が走り去る音が扉の向こうから聞こえた。
それにしても、この時代は厄介なことが多い。
妻問婚だったり、身分の差だったり……前世との違いを、否が応でもわからされる。
「源様。使いを走らせたところ、紀伊守様のところは現在、
女房……女の子がたくさんいると言うことか。
……悪くないな。
「人がいることがいいんだ、静かで寂しげなところは、気味が悪い」
まぁ、実際のところ気味が悪いと言うのは建前で、それだけ女の子がいるなら俺のハーレムの一員にでも。と思ったまでだ。
「分かりました。ではすぐにでも準備をいたします」
かくして、俺はすやすやと眠る葵を横目に、紀伊守邸へと向かう準備を始めた。
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