「光る君という名は」

 葵との情事は、熱く激しく、そして甘く愛おしいものだった。

 一緒に過ごした時間はあっという間に過ぎ去り、夜が明ける頃には、俺たちはお互いの愛を再確認し合った。


「ありがとうございます、アナタ」

「どうした?」


 布団の中で、葵が俺に礼を言う。これと言って礼を言われるようなことをした覚えはない。


「私は、次期天皇になることができないであろうアナタに対して強くあたった。それにもかかわらず、こうして愛してくれることが、こんなにも嬉しい。このことに感謝をしておかなければ、アナタの心が離れていってしまう気がして……」


 普段賑やかな葵としては珍しく、しんみりとした様子で言う。

 いや、初対面のときはもっと大人しかったか?


「そんな心配しなくても、俺の心が葵から離れることなんて、絶対にないよ」

「そう、ですか……ありがとうございます。その言葉が聞けただけで、私は心底安心しました」


 そうだ。俺の心が葵から離れることなんて絶対にあり得ない。

 なんせ前世からずっと愛してるんだ。この気持に嘘はない。

 前世では幼なじみとして、今世では父が選んだ結婚相手として出会った。

 それならばきっと、来世だって一緒だろう。だから、俺の気持ちが葵から離れることなんて絶対に有り得ない。


 これは他の、俺が前世で愛していた人たち、今世で愛している人にも同じことが言える。

 俺は絶対に彼女たちを愛する。


 そして、これは可能性の話にすぎないが……俺を殺した彼女が今世に絶対にいる。

 それも、きっと俺が愛している女たちを殺した上でこちらへ来ている。

 それだけは絶対に許せない。彼女だけは、許してはおけない。


 加えて、天皇を目指す俺にはこれから厳しい現実が待っていることを忘れてはならない。それでも、葵との時間を心に刻んで、一人の男として成長していくことを決意した。

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