ハーレムのために
どうして今目の前にいる彼女は、前世の元カノと酷似している?
年齢こそ同じではないようだが、しかし彼女たちがもう少し幼ければこうなっていたであろうと予測できる顔立ちをしている。
……いや、それよりも。
「どうして君は、そんなに不機嫌そうなんだ?」
前世の元カノと同じ顔立ちはしているものの、記憶はない。それならば、もうこの際顔が同じとかは考えなくていい。それより必要なのは、彼女について知ることだ。
俺はただ嫁を増やしたいだけじゃない。名ばかりの嫁なんていらない。
心の底から俺のことを好いてくれる女の子たちに囲まれたいんだ。
「……私ね、大事に育てられたのよ」
葵は案外すんなりと、不機嫌な理由を話し始めてくれた。
「母さんは『いつか皇太子の妃になるのよ』ってよく言ってたわ。それが、アナタみたいな二番目なんて。せっかく高い地位を得てれて、もっともっと大切にされたはずなのに」
はっ、と息を吐いてまた外へと顔を向ける。
「はは……そんなことか」
理由を聞いて俺は、何より先に笑いが出た。理由こそ違うけれど、確か前世の葵に初めて出会った時もこんな感じで、描いていた理想とは違う現実に苛立っていた。
「そんなことってね、私にとっては……!」
「大丈夫、俺が必ず幸せにしてみせる」
葵が言いかけた言葉を、抱きしめて言わせない。十二歳の体はもう、七歳の時なんかよりずっとしっかりしていた。
「なっ、なによ……そんなこと言ったって、アナタは二番目。皇太子……帝の地位の方が比べものならないくらい良いわ」
抱きしめられたままに葵はそっぽを向いて不平を言う。あぁ、こんな感じの女の子だったな、葵は。
「なら……なら俺が次の帝になろう」
これは誓いだ。本当はぬくぬくとこの地位に甘んじてハーレムを築いてやろうと思っていたが、葵が望むのなら、俺は次の帝になろう。
そして完璧なハーレムを築く。今度は誰一人悲しませない。今度は皆幸せにする。考えてみれば、そうするためにはきっと、今の地位のまま、二番目のままじゃだめだ。
「なにを言っているのかわからないわ……」
「君に笑っていて欲しいってことだよ」
「余計にわからないわ……!?」
葵が俺に抱きしめられたまま、困惑したように頭を抱える。実際困惑しているのか。俺が帝になるには、現状兄である東宮をなんとかする他ない気がするが……それはまた後で考えよう。
それよりも今は……。
「きゃっ……!?」
俺は一度葵を離した後、真っ先にその服の上からはっきりとわかる豊満な胸へと手を伸ばす。
「ちょ、ちょっと、なにを……んっ……?!」
不満ありげなことを言いかけた口を塞ぎ、さらに葵の体をまさぐる。前世では手慣れたものだったが、体が小さいがために前世ほど満足にはできない。
「ず、ずいぶんと手慣れてるのね……やっぱり、あの噂は本当なのかしら」
「うわさ?」
葵が手で口元を抑えながら頬を赤らめてそんなことを言う。噂にされるようなことを何かした覚えは……ないわけではない。
「知らないのね……藤様とデキてるって噂よ……アナタの『光の君』に合わせて『輝く日の宮』なんて呼ばれてるわ」
「マジかよ……」
思わず頭を抱えてしまう。帝はそれを知っているのだろうか……知っていて黙認しているんだとしたら懐が深すぎる。
「それで……?」
「ん?」
頭を抱えていた俺に葵が声をかける。顔を上げて葵の顔を見てみると、怒りとは別のもので頬が赤くなっているのが、薄い月の光の元でもよくわかった。
「しないの、つづき」
「そりゃぁ……」
「……んぅ……っ」
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