元服の儀と初めての嫁
時は経ち、俺は十二歳になった。この世界での十二歳は成人で、今日はその成人の儀の日だ。帝が大変世話を焼いてくれて、それはもう立派なものだった。
帝の正妻である息子(つまり兄)である東宮の元服と同等以上のものを行うと言って、料理は豪勢なものばかり。
それに加えて役所に仕えるさまざまな人たちも招き、本当に盛大なものだった。
御殿の東の廂の間に、東向きに帝の御座を置き、その前に冠をつける俺の御座、冠を与える役の引入れの大臣の御座を置いた。
俺が入場すると、すぐに髪を削ぐ儀式が行われた。髪を削いでくれたのは、招かれた役人のうちの一人で、確か財政を司る役所の人だったか。
冠を着けてもらい、用意されていた休む場所(御休所というらしい)に下がって装束を替え、東庭に下りて拝舞を舞う。ここでは藤に教わった甲斐があったのか、想像以上に上手くすることができた。
「うぅ……なんと美しい……」
「えぇ、ほんとうに……」
「あぁ……」
なぜか俺の拝舞をみて皆泣いていた。俺への扱いは神様か何かなのかと勘違いしてしまいそうだ。
「源よ、私はお前が元服するには少し早いと思っていたが……いやはや、より美しくなったものだな」
全ての儀式が終わったあと、再び御休所にてお酒の席が設けられ俺が親王たちの末席に座っていると、帝にそう話しかけられた。
「ありがとうございます父上」
「それでだな源よ、元服してなお独り身というのはよくない」
「はい……はい?」
元服したとはいえ俺まだ十二歳。別に独り身でも良くないか?まあ俺はハーレムを目指すのでそろそろ動き出そうと考えてはいたところではあるが。
「そうだな、東宮にと打診された女がいた。そいつは先ほどお前に冠を被せた左大臣の妻に大事に育てられた綺麗な娘でな……喜べ。すぐに左大臣からも言われるだろうよ」
「は、はい!」
なんと何もせずとも早速ハーレム計画が進んだ。さすが、いい身分なだけはある。
「源様」
「あなたは……」
俺が喜びに打ち震えていると、声をかける人がいた。帝がさっき言っていた左大臣だ。
「どうか娘をよろしくお願いします」
「…………」
その言葉を聞いた時、俺は何も返すことができなかった。初めてのことで面食らったのか、緊張していたのか、いまいちはっきりしない。
しかしよくよく考えてみると、女の人の親にこうして挨拶をされることなんてなかったなと、前世での彼女たちのことが思い浮かんだ。
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