俺、誕生!

「なんと美しい男の子だ!」


 次に意識を取り戻した時、俺が最初に聞いた声はそんな喜しげな男の声だった。

 十八歳であるはずの俺を赤子でも持ち上げるように軽々と空へ掲げる。


「これはきっとお前との縁の契りが深かったか、ら……おい、お前……おい、目を覚ませ!」


 けれどその男の声はすぐに慌てふためいたものになった。

 男が必死になって声をかけている相手は、女の人だった。とても美しく、まだ少女と呼べるほどに若さを感じる。けれど……息をしていないように見えた。

 そこまでして、ようやく俺は現状を飲み込み始める。

 俺は完全に赤子に生まれ変わっていた。

 周りに見える雰囲気は慣れ親しんだ現代のそれではない。先ほど見えた女の人の服装も、現代人のものではなかった。


「おい!早く治癒を!」


 男が声を荒げると、ドタドタと大きな足音を立てて何人か人が入ってきた。その人たちも慌てた様子で何かを口ずさむと、温かな緑色の光が女性を包む。

 けれど、女性に変化らしい変化見えなかった。死んでいるのだから、当たり前といえば当たり前だが。

 何かを口ずさんでいた人たちのうちの一人が出て、彼女の口元に手を当てる。


「……息がありません。ご子息を連れて外へ出てください。穢れてしまいます」


 悔しそうに俺を抱える男に告げ、男は黙って俺を抱えたまま部屋の外を出た。


「忘れ形見、というやつか……あぁ……」


 縁側らしきところまで出て、俺をそっと床に置いて男は空を見上げる。

 そうしてふっと俺へと視線を落とす。

 最初から今までの様子から察するに、彼はきっと父親で、先ほど亡くなった女性が母親だったようだ。

 と、そこまで飲み込んだ時、俺は何かが込み上げてくるような感覚があった。


「うっ、うぅぁぁぁぁ…!!」


 込み上げてきたものは涙で、この涙が悲しみによるものなのか、赤子特有のそれなのか、精神的には十八のはずの俺は、理解することができなかった。

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