第15話駄菓子屋の前で

 キャンディを持った女の子が、駄菓子屋の前で泣いていた。


 聞けば、“クッキーが欲しかったのに”のにと、母親に駄々を捏ねたのに、お詫びに手渡されたのは、ブルーベリー味のマシュマロだったらしい。


 話を聞いた手前、何となくこの場に居ずらいなった僕は、今すぐにでも離れようかと思ったが、ジーッと睨む女の子せいで、動けなかった。


「……これで許して」


 僕は後で食べようと大切に取っておいた、さくら色のキャンディを、涙ぐんでいる女の子の手に握らせる。


 彼女は“何だろう?”と言う代わりに、暫くの間キャンディを目を丸くして見つめた。


 そして、パクンと口の中に入れた途端、口の端がゆっくりと上がっていく。


その姿を見届けた僕もまた、笑顔になってその場をあとにした。


お仕舞い


三題噺「キャンディ」「クッキー」「マシュマロ」


令和5(2023)年3月18日12:03~12:22作成





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