第34話 田村のサヨナラホームラン?

     (実況中継)


「田村が一旦、バッターボックスをはずしました。そして、バッティングコーチの平田がサインを出と、田村は肯きました。今のサインは何を意味するのでしょうか? ここでフォアボールですと、ホームランキングはパイレーツのバークランドと並び42本になるわけですが、田村の最後の打席だったので勝負をしてほしかったですね、川籐さん」


  

「まあ、この状況では残念ですが、仕方がないでしょう」

と川籐が辛い表情で言った。


  

「野口は、第1球目、2球目と明らかにボールを高めに外し、2ボールとしました。

そして、3球目もボールです。あと残り一球となりました」



大阪ドーム内、ほとんどの観客は総立ちになり、「勝負しろ!」「野口、逃げるな!」と一部の観客は大きな声で叫んでいた。


しかしながら、キャッチャーは立ったままである。そして、野口がセットポジションから、第4球目を投げたのだ。


「田村はまだ諦めず、打つ構えです。そして、野口、第4球目を投げました。ボールは田村の胸の高さ近くへ、フォアボール、いや、田村はバットを大きく振りました。打球はセンター方向へ飛んでいます。センターはバックしています。しかし、捕れません。3塁ランナーはゆうゆうホームへ、1点が入りました。センターがボールを追いかけるのを見てクルーズの代走、亀山が二塁から三塁、そして、ホームへ入り同点になりました。田村は3塁でストップか? 3塁コーチ、平田がぐるぐると手を回しています。ボールがセンターからショートへ返球され、バックホームへ、田村はヘッドスライディングしました。キャッチャー、ワンバウンドで捕り、田村の足へタッチ。判定は? 主審は右手でアウトのポーズ。同点に終わりました。非常に残念でした」



すると、川藤が、

「今、監督が飛び出して来ましたよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る