第18話 誠の嫉妬

 大地が田村のサインボールを持って、含み笑いをしていたため、


「大地君、そのボールどうしたの?」と誠が尋ねた。


「ジャガーズのタムのサインボールだよ」


「いいな、僕もほしいな。ちょっと見せて」


「だめ、僕の宝物だから」と大地は断った。


「ケチ! ママに言いつけるから」と誠が言ったため、


「いいよ」と大地は強気で言ったのだ。



   (翌日、病室での誠と美代子)


「ママ、僕もサインボールがほしいよ」と誠が言った。


「誰のサインボールがほしいの?」と美代子が尋ねると、


「ジャガーズの選手のボールがほしいの。大地君が持っているんだよ」


「でも、どうして大地君がサインボールを持っているの?」


「知らないよ」と誠は少し涙目で言った。



その翌日、美代子がひとみに、


「村山さん、大地君がジャガーズの選手のサインボールをもらったと誠から聞いたのですが、ほんとうですか?」と尋ねた。


「はい、実は先日、ジャガーズの田村選手が来て下さって、大地にサインボールを頂きました」


「そうなのですか? 今度、田村選手を見かけたら、誠にもサインボールをお願いできないかしら?」と美代子が聞くと、


「田村選手が、来られたら言えるかもしれませんが、次回、いつ来られるのか分からないので、お約束はできないと思うのですが」


「そうよね、田村選手もお忙しい人ですものね。でも、どうしてこんなところにわざわざ来るのかしら? 何かあると思わない?」と美代子が言ったため、


「私にはちょっと」とひとみは言葉を濁した。



そして、その数日後、美代子は偶然、病院のロビーでジャガーズの田村を見かけることになるのだ。その時に美代子が、幸二に声をかけたのだ。




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