第17話 幸二の誤解

 幸二は、少し焦った様子で、


「いや、別に意味はないよ。大地君、義姉さん、また来ますから」

と言い、幸二が出て行こうとして振り返ると、

 

「兄貴、ちょっといいかな?」と幸二が言ったため、


幸雄は、幸二の後を追い病室を出た。


二人は、病室を出て、前の廊下を少し歩くと、


「さっきの話の件だけど、ジャガーズの田村の事で、ある噂を聞いたんだ」と幸二が言ったため、


「何だ、話してくれ」と幸雄が言った。


「話すよ。確か二週間くらい前、俺が偶然、この病院のロビーでジャガーズの田村を見かけたんだよ。サングラスもかけずに、背も高かったので、他の人達も恐らく田村に気付いていたと思う。そして、ある女性が俺に、(あの人は確かジャガーズの田村選手ですよね?)と言ったんだ。


俺は、間違いないでしょうと断言した。すると、彼女は(最近、よく小児病棟に来ているらしいですよ)と言ったため(見ず知らずの子供達にわざわざ会いに来ているのですか?)と聞くと、(最近、田村選手の人気も無くなってきているから、サインボールを配っているみたいですよ。人気回復でもねらっているのかしらね)と言ったんだ。 だから、さっき俺はそのように話したんだよ」と幸二は説明した。


「ジャガーズの田村さんは、そんな人ではないよ」と幸雄が言うと、


「何でそんな事が兄貴に分かるんだ?」と幸二が言った。


「彼は、大地に会いに来てくれたんだよ。お前が思っているような気持ちは100%ないと信じているよ」と幸雄は言った。


「でも、どうして大地君にだけ会いに来ているの?」と幸二が言ったため、



幸雄は最初から経緯を幸二に話すことにした。 


「兄貴、すまない、俺の早とちりで」


「別にお前が謝る必要はないだろ」と幸雄が言った。


「いや、謝らなければならない事があるんだ。これを見てくれるか?」と言い、幸二は手提げかばんより写真週刊誌を取り出し、あるページを開けて幸雄に見せた。


「まさか?」と幸雄が尋ねると、


「本当に申し訳ない。そんなことを知らずに、嘘を書いてしまった」


「お前は一体何ということをしてくれたんだ! 彼が試合に出ていない理由を、やっと理解ができたよ。まさか、お前がそんなことをしていたなんて俺は情けない。もう二度と、こんなつまらない記事を書くんじゃないぞ!」と幸雄が強く言った。




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