第16話 幸二が大地の見舞いへ
大地は入院をして一ヶ月になるが、唯一の楽しみは部屋のテレビで、ジャガーズを応援することである。ただし、大地の部屋は二人部屋のため、夜の8時までしか見られないのだ。
そして、いつものように大地がテレビをつけると、何かが違っていた。
「ママ、タムが出てないよ」と大地が言った。
「ほんとに?」とひとみが聞くと、
「ほんとに出てないもん」と言ったため、幸雄が、
「田村選手は、怪我で休んでいるんじゃないか?」と言った。
「タムがケガをしたの? 大丈夫かな?」と大地が不安そうに言ったため、
「きっと、すぐに治るから大丈夫だよ」と幸雄が言った。
その時、面会時間のぎりぎりに、幸雄の弟、幸二が大地の見舞いへ来た。
「こんばんは、大地君。元気にしてる?」と幸二が言うと、
「幸二君、わざわざ来てくれてありがとう」とひとみが言った。
「いえ、僕は相変わらず暇にしていますので」と幸二が少し笑って言うと、
「お前もいい加減、定職についたらどうだ? まだフリーターだろ」
と幸雄が言った。
「兄貴に会えば、その話ばかりだからな」と幸二は少し不満そうに言った。
幸二は私立の大学を出て就職をしたが、半年はもたず、その後いろいろなアルバイトについていた。今は、フリーカメラマンとして記事なども書いていると、母親から幸雄は聞いていた。
「今回はいつもよりギャラが良かったから、大地君にお土産を買って来たよ」
と幸二が言うと、
「ギャラって何?」と大地が聞いた。
「幸二!お前がそんな言葉を使うから」と幸雄が幸二に強く言うと、
「大地君、ギャラっていうのは、お金のこと。会社の人からお金をもらったんだよ」と少し焦って幸二が言うと、大地へ筆箱と一ダースの鉛筆を渡した。
「来年、小学校で使ってね」と幸二が言うと、
「まだ10ヶ月、先だぞ」と幸雄は呆れて言ったが、
「ありがとう、幸二おじちゃん。あのね、幸二おじちゃんに見せたい物があるの」
と大地は言ったため、
「何かな?」と幸二が聞いた。
大地は、枕元に置いてある宝物を見せた。
「サインボール? 誰のサインボール?」と幸二が聞くと、
「タムからもらったの」と大地が言ったため、
「タムって誰?」と幸二が尋ねた。
「ジャガーズの田村選手のことだよ」と幸雄が言った。
「田村がここにも来たの?」と幸二が意味不明なことを言ったため、
「ここにもというのは、どう言う意味だ?」と幸雄が尋ねた。
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