第15話 田村の停止処分
帰りの新幹線で、田村は平田に大地とホームランの約束をしてしまったことを話した。
「外国映画の見過ぎじゃないか? 昔、ベーブ・ルースが、ある子供とホームランの約束をしたが、1本も打てなかった。なのに、お前は1本だぞ!」と平田が言った。
二日後、田村は広報担当の安井に呼ばれ、事務所へ入った。
「安井さん、試合前に何か急用なことでも?」と私が尋ねると、
「確かに急用なことだ。結論から言うよ。田村君、今日から一週間、停止処分になったからね」
「俺は、怪我なんかしていませんよ」と言うと、
「怪我のほうがましだよ。明日の写真週刊誌に君の記事がでることになった」と安井がと言った。
「一体、何の話ですか?」と私は尋ねると、
安井は、その記事のコピーを田村に見せた。
その記事の内容とは、
(ジャガーズの田村が、試合前に病院へ行き、見ず知らずの患者にサインボールを渡している。売名行為か? 今年の田村の引退を回避するための策略か?)
そして、田村がその病院を出るところを、撮られていたのだ。
「認めるよね? 言い訳があれば聞こうか? 監督にはこの件について、すでに伝え済みだから」と安井は淡々と言った。
「何もありません。ご迷惑を掛けました」と田村は言い、その部屋を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます