第15話 田村の停止処分

帰りの新幹線で、田村は平田に大地とホームランの約束をしてしまったことを話した。


「外国映画の見過ぎじゃないか? 昔、ベーブ・ルースが、ある子供とホームランの約束をしたが、1本も打てなかった。なのに、お前は1本だぞ!」と平田が言った。



二日後、田村は広報担当の安井に呼ばれ、事務所へ入った。


「安井さん、試合前に何か急用なことでも?」と私が尋ねると、


「確かに急用なことだ。結論から言うよ。田村君、今日から一週間、停止処分になったからね」


「俺は、怪我なんかしていませんよ」と言うと、


「怪我のほうがましだよ。明日の写真週刊誌に君の記事がでることになった」と安井がと言った。


「一体、何の話ですか?」と私は尋ねると、



安井は、その記事のコピーを田村に見せた。 


その記事の内容とは、


 (ジャガーズの田村が、試合前に病院へ行き、見ず知らずの患者にサインボールを渡している。売名行為か? 今年の田村の引退を回避するための策略か?)


そして、田村がその病院を出るところを、撮られていたのだ。


「認めるよね? 言い訳があれば聞こうか? 監督にはこの件について、すでに伝え済みだから」と安井は淡々と言った。


「何もありません。ご迷惑を掛けました」と田村は言い、その部屋を出た。


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