第14話 大地との約束

六月になり、田村は本拠地に戻った時、何故か再び大地に会おうと決めていた。


前回のように、3試合目が終わった翌日に、大地が入院している病院へ向かった。


今回は、病室も覚えていたため、受付を通し問題なく入ることができた。


「こんにちは」と田村は言って大地のベッドへ向かうと、


その日は、ひとみが大地の病室にいた。


二人は田村の方へ振り向くと、


「あ、タムだ!」と大地は大声を出すと、 


「田村さん」とひとみは驚いた表情で言った。


「大地君、元気にしている? この前、手紙を送ってくれてありがとう。手紙を書かなくてごめんね。今日は大地君に会いたかったので来たんだ。ところで、大地君の誕生日はいつかな?」と田村が尋ねると、


「えーと、7月4日」と大地が答えた。


「大地君、誕生日のプレゼントは、何がほしいかな?」と私が聞くと、


「田村さん、大地にプレゼントだなんて、こちらに来て頂けるだけで、大地にとって嬉しい思い出ですから、ほんとうにお気持ちだけで十分です」とひとみが言った。


「そんなたいした物は、できませんから」と田村はひとみに言うと、


「大地君、何でもいいよ」


「ほんとに何でもいいの?」と大地が聞くと、


「いいよ、何でも言ってごらん」


「欲しい物はないけど…」と大地が少し躊躇しているようにみえた田村は、


「欲しい物はないけど、何かな?」


「タムのホームランが見たいの」と大地は言った。


「ホームラン?」と田村が言った後、少し考えた末に


「わかったよ、大地君。がんばって一本打ってみるよ」と田村は人差し指を出すと、


「ちがうよ、ホームラン2本、打ってほしいの」と大地は、指でピースをした。


「大地、そんな事を田村選手に言わないの」とひとみが大地に言うと、


「だって、タムは何でもいいよって、言ったよ」


「大地、いい加減にしなさい!」とひとみが大地を叱った。


「村山さん、大地君を叱らないであげて下さい。私が言い出したことなので、全て私の責任ですから」と田村がひとみに言った後、


「大地君、僕もがんばってホームランを打つので、大地君も病気をやっつけるんだよ」


「うん、がんばって病気をやっつける」と大地は言った。


 

田村は大地に再び会う約束をして、病室を出た。


そして、田村がタクシーを待っている時、フラッシュのようなものが、2、3回光ったような気がしたが、気のせいだと思っていた。


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